商標区分の選択で間違えやすい事例を七つ紹介

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初めに

商標登録する際には、商標を決めるだけでは十分ではなく、その商標を何の商品や役務(サービスのことです)に使用するかを指定しなければなりません。

この指定した商品や役務はそれぞれ第1類から第45類のいずれかの区分に属します。ですので、商標登録出願の際の区分指定を間違えると、本当に必要な権利が漏れてしまい、どうでもよい権利を取得するミスが発生する可能性があるのです。

今回は、実務上間違いが生じ易い商標区分の選択について取り上げます。

索引

(1)権利範囲をはっきりさせない方が権利が広いと考えるのは間違いです

商標区分を明確に指定しない方が、権利範囲が広いと考えるのは誤解です。

日常生活では態度をはっきりさせない方がその後の選択肢が広くなります。このため、商標登録する商品とか役務を決め打ちしない方がよい、と考えてしまう場合があります。

ところがこの考え方は結構危険です。

商品や役務を決めないで、とりあえず何でもかんでもあらゆる区分について権利申請した、とします。

審査に合格したのがスリッパとバケツに関連する区分だけで、他のアイテムが全滅して審査に通らない状況であったとします。

この場合、そのまま手続を進めると本当にスリッパとバケツだけの商標権が発生してしまうことになります。

でも本当に必要な商標権はスリッパとバケツの商標区分についてのものだったのですか、という疑問が必ず出てきます。

商標区分を選択する際には、その商標区分に含まれる商品や役務が権利範囲に入っていないと商標権を取得しても意味がない、という商標区分があるはずです。この商標区分がどれかということを最初に必ず特定しておかなくてはなりません。

そしてその商標区分に含まれる商品や役務が権利範囲に入っていないと商標権を取得しても意味がない、という商標区分を抽出して、その区分を明確に理解した上で実際に商標登録出願をするのです。

そうでないと、本当に必要な権利を取ることができずに、どうでもよい権利を取得してしまうことになります。

(2)扱っているものが商標区分の対象と考えるのは間違いです

商標を使用する商品や役務は何ですか、と聞かれると、多くの方は、「名刺、パンフレット、インターネット、ホームページ」だと回答します。

自身の業務に使用するのは「名刺、パンフレット、インターネット、ホームページ」だから、これらの商品や役務に対して同じ様な商標を他の人に使われると困るからです。

ところがこれが実は違うのです。

たぶん大恥をかく人がいっぱい出ると思いますので、小さい声でそっといいますね。いいですか、よく聞いてくださいよ。

商標区分を選択する際に、最初にする最大の間違いの代表例が、商標登録の際の商標区分として「名刺、パンフレット、インターネット、ホームページ」に関連する区分を選ぶこと、です。

実は、商標登録出願の際に選択する商標区分は、自分が使うものではありません。そうではなくて、お客さまに売るものを指定するのです。ここを勘違いしている方が圧倒的に多いです。

お客さまに対して提供することにより、対価を頂くもの。これらが含まれるものが、選択する商標区分の対象になります。

おそらく多くの方は、確かに「名刺、パンフレット、インターネット、ホームページ」を使っていると思います。けれども、商標法でいう「名刺、パンフレット」は、「自分が使うものではなく、顧客に販売するための名刺やパンフレット」という意味です。

同様に、商標法でいう「インターネット」は、「自分が使うものではなく、お客さまにネット回線を提供する」という意味です。さらには商標法でいう「ホームページ」は、「自分が使うものではなく、お客さまからお金を貰ってホームページを作ってあげる」という意味です。

どうですか?あなたの理解と一致していますか?

さざえさんのマスオさんのように、「えっ、え〜!!」と言わないでくださいね。

もし間違えて「名刺、パンフレット、インターネット、ホームページ」についての商標区分について商標登録を済ませてしまった人は、落ち着いて、次に続く下記の内容をよく読んで理解した上で行動してくださいね。

(3)商標を表示するものを商標区分として選択するのも間違いです

商標を使う商品や役務といった場合に、商標を表示する商品を商標区分の対象に考える人がいます。

けれどもそれも間違いです。

これも間違ってしまった人が恥をかかないように、小さな声でいいますね。

間違いの代表例は、例えば、包装紙、ステッカー、印刷物等に関連がある商標区分を選択することです。

包装紙、ステッカー、印刷物等に関連がある商標区分を選択することにより、包装紙、ステッカー、印刷物等を使って商標を表示しておけば、これらの包装紙などで包んだり表示したりしたあらゆる商品に商標権の効力が発生すると考えるのですね。

けれどもそれは決定的な勘違いです。

仮に包装紙、ステッカー、印刷物等に関連がある商標区分について商標権を得た、とします。

そうして得られた権利の内容は、審査に合格した登録商標を使用して「包装紙、ステッカー、印刷物等」を売ることが独占できる、ということです。

登録商標が表示してある「包装紙、ステッカー、印刷物等」で包んだり表示したりしたものには、権利の効力は及びません。

どうですか?あなたの理解と一致していますか?

「包装紙、ステッカー、印刷物等」を販売しないのであれば、これらが含まれる商標区分について商標権を取得するのはお金と時間の無駄になります。

(4)包装容器に関連する商標区分を選択するのも多くは間違いです

例えば、トマトジュースについての商標権を取得するときに起きるミスは、そのトマトジュースを入れるための缶、ビン、ペットボトル容器に関連する商標区分を選択してしまうことです。

売るものがトマトジュースなら、選択しなければならないのは、「果実飲料」が含まれている区分です。ここで間違えて、缶、ビン、ペットボトル容器等を含む商標区分を選択したのであれば、まるまるトマトジュースについての権利が抜け落ちてしまいます。

同様に、レトルトパック入りの調理済みカレーの商標権を取得する場合には、レトルトパックについての商標区分を選択してはいけません。選択すべき商標区分は、「調理済みカレー」の商品が含まれる商標区分です。

間違えて、レトルトパックを含む商標区分を選択してしまうと、まるまる調理済みカレーについての権利が抜け落ちてしまいます。

ここで、「レトルトパック入りの調理済みカレー」と、「調理済みカレーを入れるレトルトパック」との違いに注目してください。

商標登録出願の際に選択すべき商標区分は、それぞれの商品毎に形容詞句を除いた商品で考えます。

例えば「レトルトパック入りの調理済みカレー」なら、これは「調理済みカレー」が保護すべき対象になりますので、「調理済みカレー」が含まれる商標区分を選択します。

同様に、「調理済みカレーを入れるレトルトパック」なら、これは「レトルトパック」が保護すべき対象になりますので、「レトルトパック」が含まれる商標区分を選択します。

(5)広告で自社の宣伝を行うのに広告業の区分を選択するのは間違いです

今度、自社開発の扇風機をインターネットで広告して販売するために選択しなければならない商標区分は広告業ではありません。

これも間違ってしまった人が多くいると思うので、間違ってしまった人が恥をかかないように、小さな声でいいますね。

商標法にいう広告業とは、自社の広告のことではありません。商標法にいう広告業とは、他人のために広告を行う業務のことをいい、代表的なものとしては、例えば電通とか博報堂とかが取得すべき商標区分です。

「げげっ」、とか言っている人はいませんか?大丈夫ですか?

自社開発の扇風機をインターネットで広告して販売するために選択しなければならない商標区分は、「扇風機」を商品として含む区分です。この商標区分を探すのです。

他の商品の場合も同じです。自社の商品を広告により売り出すために取得しなければならない商標区分は、実際に売り出す商品が含まれる区分です。

例えば、広告により肉を売るのであれば、肉の商品が含まれる商標区分を選択しますし、広告により化粧品を売るのであれば、化粧品が含まれる商標区分を選択します。

(6)知識の教授の商標区分で全てカバーできると考えるのは間違いです

人に何からの情報を伝える商標区分の代表例として、「知識の教授」を含む第41類の商標区分があります。人に何らかの情報を伝える商標区分として、この第41類を取得するだけではカバーできないものがあります。

代表例を挙げると次の通りです。

第41類の「知識の教授」だけではカバーできないもの

  • 旅行情報の提供
  • 不動産情報の提供
  • 税務についての情報の提供
  • 建築工事に関する助言
  • 鉄道運行情報についての情報の提供
  • レストランに関する情報の提供
  • ファッション情報の提供

等は、知識の教授についての商標区分を選択するだけではカバーできないです。
それぞれの業務に関連する商標区分を選択しないと、すべて権利範囲から抜け落ちてしまう点に注意してください。

(7)一つの区分の法律表記全体を選択すればその区分に抜けはないと考えるのは間違いです

商標区分の中には例示列挙のものがあります。
商標法に規定される商標区分の全てを選択しても、権利範囲から抜け落ちる商品役務があります。

法律上の記載を全て選択しても、漏れる権利がある。

これはある意味恐ろしい事実ですが、このことをご存じでしたか?

例えば、商標区分の第35類に小売役務が規定されていますが、この法定上の小売役務を全て選択したとしても、権利範囲からぬけおちる小売役務がでてきます。

第35類に規定されている法律上の表記は、例示列挙であって、あらゆる小売役務の形態をカバーした内容にはなっていないからです。

ですので、第35類を選択すれば漏れなく全ての小売役務がカバーされていると考えるのは間違いです。
実際にご自身が必要なアイテムが含まれているかどうかを一つひとつ検討する必要があります。

その上で抜けている小売役務があるのであれば、別途自ら追加して記載しなければなりません。

そして最後に一番こわい事項を小さな声でそっといいます。

出願の際に記載していない商品、役務とか商標区分は、後から追加することが認められないのです。

後から追加することができないからこそ、ファーイースト国際特許事務所ではお客さまと徹底的に商標区分について議論してその内容を詰めていきます。

ファーイースト国際特許事務所

平野泰弘所長弁理士

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