指定商品や指定役務の選び方

商標登録申請の際には商標と一緒に、指定商品や指定役務を記載しなければなりません。これらの指定商品等の選び方を失敗すると、特許庁に出願した後に追加訂正することができず、また出願しなさなければなりません。商標登録出願の際に失敗しやすい指定商品や指定役務の選び方について分かりやすく解説します。

*2017年2月23日改訂

索引

(1)典型的な指定商品選択の失敗事例とは?

典型的な指定商品選択の失敗事例(その1)

例えば特定の商標について指定商品を「歯磨き」とする場合があったとします。この場合、典型的な失敗事例が次の事例です。

お客さま:『商標Aについて、指定商品「歯磨き」について商標登録をお願いします。』

特許事務所:『指定商品は「歯磨き」ですね。了解しました。では「歯磨き」を指定して願書と見積書を作成しましょう。』

・・・というのが典型的な失敗事例です。

どこが間違っているか分かるでしょうか。分かる方は以下の記事はスルーしてもらって問題ありません。けれども、ちょっとでも引っかかる人は以下の記事を注意深く読んでください。

指定商品「歯磨き」だけの選択で本当によいか

まず一つ目の注意点は、指定商品「歯磨き」について商標権が必要ならそれについて商標登録出願をするのは当然としても、それ以外に同一の区分内に、指定商品「歯磨き」の他に権利取得が必要なものがないか検討が必要です。

例えば商品「歯磨き」については、商標法に定める区分の第3類に該当します。けれども商品「歯磨き」を指定したとしても、第3類に属する全ての商品を選択したことにはなりません。

願書には、「第3類」と「歯磨き」を記載しています。願書に「第3類」と記載されているので、第3類全体が自動的に選択されることになる、と勘違いされる方がいます。

けれども願書に「第3類」との区分が記載してあったとしても、区分に続く記載として指定商品や指定役務を具体的に記載しないと、記載しなかった指定商品、指定役務は権利範囲から抜け落ちます。

例えば、指定商品として「歯磨き」を選択したとしても「化粧品」を選択して記載しなければ、指定商品としての「化粧品」が権利範囲からごっそり抜け落ちます。

指定商品「歯磨き」が「化粧品」に類似するかというと、類似しません。つまり指定商品「歯磨き」を指定するだけでは類似外の商品を範囲を権利に含めることができないのです。

しかも後から指定商品が抜け落ちていたことに気がついたとしても、後から抜けていた指定商品を追加記載する補正は認められません。もしこのようなミスに気がついた場合には新たに別の出願をしなさなければなりません。

典型的な指定役務選択の失敗事例(その2)

例えば特定の商標について指定役務を「ホームページの作成・保守」とする場合があったとします。この場合、典型的な失敗事例が次の事例です。

お客さま:『商標Bについて、指定役務「ホームページの作成・保守」について商標登録をお願いします。』

特許事務所:『指定役務は「ホームページの作成・保守」ですね。了解しました。では「ホームページの作成・保守」を指定して願書と見積書を作成しましょう。』

・・・というのが典型的な失敗事例です。

どこが間違っているか分かるでしょうか。上記の事例を読んだ方はピンとくると思います。

指定役務「ホームページの作成・保守」だけの選択で本当によいか
例えば役務「ホームページの作成・保守」については、商標法に定める区分の第42類に該当します。けれども役務「ホームページの作成・保守」を指定したとしても、第42類に属する全ての役務を選択したことにはなりません。

願書に「第42類」と「ホームページの作成・保守」を記載したとしても、指定役務として「ホームページの作成・保守」とは別に「電子計算機用プログラムの提供」等の役務を指定しないと、クラウド環境の提供関係の役務についての権利範囲が商標権からごっそり抜け落ちます。

この場合も後から登録商標の指定役務が抜け落ちていたことに気がついたとしても、後から登録商標や商標出願の願書に抜けていた指定役務を追加記載する補正は認められないのです。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その3)

次によくある典型的な失敗事例は、「指定商品や指定役務の選択がよく分からないのでとりあえず全部選ぶ」、というものです。

商標登録の料金は、選択する区分の数に依存します。商標の区分とは、指定商品や指定役務を定める範囲のことを意味し、第1類から第45類まで45個あります。この区分をいくつ選択するかで商標登録の費用が変わってきます。

区分の数が増えると、カバーされる指定商品や指定役務のが増えるので権利範囲が広くなります。けれども商標登録に要する費用が増大してしまいます。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その4)

例えば保護しなければならない商品が「ビール」であったとします。この場合、ビールを売るのか、あるいはビールを提供するのかにより指定するべき商品と役務に変化がでます。この選択に失敗するケースがあります。

ビールを購入した客がビールを持ち帰る場合には、第32類の商品「ビール」を選択します。

テイクアウトのケースでは全て商品に該当するので、指定商品は商品区分から選択しなくてはいけません。

これに対してビールを注文した客が店舗内でビールを飲む場合には、第43類の役務「飲食物の提供」を選択します。

イートインのケースでは全て役務に該当するので、指定役務は役務区分から選択しなくてはいけません。

特許庁では、商品同士や役務同士が類似するかどうか、商品と役務が類似するかどうかは、それぞれの商品や役務に付けられている類似群コードで判断します。コードが同じなら類似、コードが異なるなら類似しないとして扱います。

第32類の商品「ビール」の類似群コードは28A02ですが、店舗内のビール提供は第43類の役務「飲食物の提供」であり、この類似群コードは42B01で、互いに異なります。類似群コードの情報は類似商品・役務審査基準に記載されています(類似商品・役務審査基準自体は毎年のように改正されて変化するため、古い情報を参照しないようにしましょう。)。

ビールを売るといっても、商品として提供する場合と、役務として提供する場合がある、ということです。事前に知っていれば何でもありません。

関連する商品が異なる区分にあることを知らなければ片方の区分の権利を取って安心してしまいがちです。安心していると、残りの区分を他人に取られてしまうケースもあります。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その5)

製品とその製品に使う用具の関係の場合、製品と用具が同じ区分にあるケースもあるし、違う区分にあるケースもあります。

同じ区分なら見落とすことは少ないと思いますが、知らないと違う区分にある商品等を見落としてしまいます。

例えば、歯磨き(第3類)と歯ブラシ(第21類)とは別の商品であり、類似しません。このため指定商品として歯磨きを選んでも歯ぶらしは商標権の範囲に含まれないです。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その6)

形状が同じ製品でも材料が違うと別の商品になるものがあります。例えば包装容器の場合は、紙製の包装容器なら第16類、金属製の包装容器なら第6類、プラスチック製の包装容器なら第16類です。

紙製の包装容器とプラスチック製の包装容器は同じ第16類の区分に入りますが、両者は異なる商品です。知らないとびっくりするのではないでしょうか。

仮にプラスチック製の包装容器のみを選択して商標登録出願した場合、紙製の包装容器、金属製の包装容器、ゴム製の包装容器、布製の包装容器等は全部権利範囲から抜け落ちます。

このようなうっかりミスを防ぐためにも出願の内容に抜けがないか、事前に書面を調査して確認しなければなりません。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その7)

貴金属の加工販売も注意が必要です。店頭で貴金属を加工して販売する場合、販売する内容がアクセサリーなら第14類の身飾品になります。

ところが貴金属を加工するだけの場合は、第40類の貴金属の加工になります。加工の場合は、預かった貴金属を加工して返品するだけです。

販売現場だけを見ていると、貴金属販売なのか、貴金属加工なのかが明確に分かりにくい場合もあるでしょう。商品や役務の選択を間違えないようにしないといけません。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その8)

あいまいな商品や役務の指定は、審査の段階で拒絶理由になります。審査官が願書をみて商品や役務の指定があいまいと感じた場合は意見書で意見を述べるように指導されます。

商品や役務について明確に回答できないと出願が拒絶されるケースもあります。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その9)

商品や役務については個々の細かい指定が必要になる場合があります。例えば、一口に織物といっても、織物に使う化学品は第1類ですし、織物に使う洗剤は第3類です。また織物そのものは第24類になります。

織物を指定しても、関連品がその区分に含まれるかどうかは分からないのと同様、多くの商品は関連品が散らばっているので見落とさないようにします。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その10)

商品の中には家庭用と業務用とが分かれているものがあります。このため家庭用の装置を指定しても業務用の装置が含まれないので失敗します。

例えば家庭用空調装置も業務用空調装置も第11類ですが、互いに類似しない関係の商品です。明確に「家庭用」と「業務用」を意識して願書を作成しないと、権利漏れが発生することもあります。

指定商品や指定役務は、知っていれば何でもないのですが、これらの情報を知らないと電話帳ほどの厚みがある指定商品役務一覧のリストを精査しなければなりません。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その11)

デジタル時計には注意が必要です。時計として使っていても、結局音楽再生プレイヤーとか、スマートフォンが実体なら、音楽再生プレーヤーとかスマートフォンを商標登録の際の商品として指定します。

時計を指定商品として選択した場合、電気通信機能のある装置とか、電子計算ができる装置や機械は権利範囲から漏れます。

典型的な指定商品選択の失敗事例(その12)

指定役務の広告は、自社の広告は入らない?

商標法に定める広告は、他人のために行うものです。商標を自社の業務の宣伝に表示するのは、商標法の指定役務としての広告業には入らないです。

広告業の指定役務を選択するのではなく、まずは自社の業務に関する役務を指定すればよいです。

(2)指定商品とか指定役務は何を参考にして決まる?

商品や役務については国際条約の一つであるニース協定の内容も考慮して日本の商品・役務の分類が決まります。

また商標法で扱う商品は工業品に限定されず、家庭用に使う商品であってもよいです。

(3)指定商品とか指定役務に制限はある?

商標法に規定される指定商品や指定役務はどれでも選択できるとは限らないのです。

資格がないと扱えないものについては無資格者が出願申請しても審査に合格できない場合があります。

例えば医師でない者が医療関係の第44類の医業を指定役務として権利申請しても特許庁で拒絶されます。

(4)商標登録に食品販売の免許や乗物の運転免許は必要?

商標登録をする際に、指定商品として食品を選択する場合、特に食品販売の免許の提示を求められることはありません。

ただし、食品販売に求められる資格がないのに食品を販売した場合には商標法ではなくて、食品関連法規で罰せられることになります。

また乗物の免許を持っていない個人でも、自動者の装置の動かし方を知らない人でも、自動車や自動二輪を指定商品とする商標登録が可能です。

運転免許がないのに自動者を運転した場合は、商標権を付与したことは問題にはならず、無免許運転者が道交法などの法律の適用対象になります。

(5)日本にない野菜や果物を商品として指定できる?

もちろんできます。

日本の商標権は日本国内だけが効力範囲です。けれども日本に流通していない野菜や果物であっても、商標登録の際の商品として指定できます。

外国からそれらの野菜や果物が輸入されるシーンで、有効に商標権を活用することができます。

野菜や果物を商品として指定する場合、野菜や果物を原料としてつかった場合は別商品になる点に注意してください。

例えば、野菜や果物の加工品は、野菜や果物そのものと別商品扱いですし、野菜や果物から抽出した油脂も野菜や果物そのものと別商品扱いです。

(6)複数の商品や役務を指定してもよい?

自己の業務に使用する予定のある範囲で商品や役務を指定すれば、どれだけ複数の商品や役務の指定があっても、複数の指定があるという理由のみにより商標登録が拒絶に至るわけではないです。

ただし、あまりにも多くの商品役務を指定すると、特許庁の審査官から本当に使用するつもりがあるかどうかの釈明を審査の過程で求められます。この指摘に対して適切に対応しなければ出願が拒絶されることもあります。

(7)指定商品や役務の選択を間違えないためには?

専門家にこちらの中心業務が何かをしっかり伝える

中心業務とそれ以外の周辺業務を分別して、中心業務について商標権が取れないなら商標登録する意味がない、ということを専門家にしっかり伝えましょう。

例えば、DVDレンタル屋さんの場合で考えてみましょう。

このDVDレンタル屋さんの場合、扱っている商品や役務が、ビデオのレンタルの他に、書籍、文房具、携帯電話、携帯電話のストラップ、テレビゲーム機、携帯ゲーム機、ゲームソフト、CD、DVD等を販売していたとします。

この場合は「DVDのレンタル業務」が中心業務であり、「書籍、文房具等」の商品については周辺業務になります。

「DVDのレンタル業務」について商標権が取れないなら、「書籍、文房具等」の商品について商標権を取っても意味がないということをしっかり専門家に伝える必要があります。

何もかも重要だ、と専門家側に伝えた場合、専門家側は可能な限り救えるものは一つでも権利を取ろうと努力するでしょう。

けれども最終的に「DVDのレンタル業務」についての商標権が得られずに「文房具」についての商標権が得られても仕方がないことがわかっているなら、早い段階でその点について専門家との間で合意しておきます。

そうすれば不要なものについて権利を取得するミスを防ぐことができます。

専門家としっかり相談できる、ということが、後々の不要な費用の発生を防ぐために重要です。

(8)指定商品・指定役務選択の判断基準

そうはいっても、どの指定商品・指定役務を具体的に選べばよいか分からない場合があると思います。
この場合には次の基準で考えていきます。

(A)一回の出願で権利を取り切る方が安いなら権利を取り切れるだけ選ぶ

例えば、権利範囲の兼ね合いで費用が変化する場合、一回の出願で掛かる費用と、二回以上に分けて出願した場合に掛かる費用とを比較し、一回の出願で権利を取り切る方が安いなら権利を取り切った方がよいです。

後から高いお金を出して権利を再度取得するのは避けるべきです。

(B)専門家との間で中心業務以外は無料削除できることを事前合意しておく

中心業務についての商標権が取れないなら、それ以外の周辺業務について出願後に無料で削除できるように専門家と事前に合意しておく必要があります。

中心業務についての商標権が取れないなら、それ以外の周辺業務について出願後に無料で削除できるように専門家と事前に合意しておく必要があります。

良心的な特許事務所なら、周辺業務の指定商品や指定役務の無料削除に応じてくれます。

商標登録出願の場合、願書に記載しなかった指定商品や指定役務は後から追加記載することができません。
このため、気になるものがあれば最初から入れておくべきです。後からやっぱり必要だった、という場合には最初から出願のやり直しになるからです。

権利をとるかどうか悩むものについては最初に願書に記載しておき、後から無料で削除できる状態にしておけば安心です。

(C)出願前に必ず弁理士と相談すること

指定商品や指定役務の選択は専門性が高い問題のため、出願前に商標専門の弁理士に確認してもらいます。

もう今は少なくなっていると思いますが、パートやバイトを大量動員して、素人を専任担当にしてお客さまに対応させていた業者がありました。

パートやバイトを大量動員して多くの案件をさばいた方が儲かるからでしょうね。

こういった業者は簡単に判別することができます。電話で商標専門弁理士を呼び出して、あなたの案件について質問すればよいのです。

きちんとした特許事務所なら商標専門弁理士が必ず在籍し、商標専門弁理士を指定すれば必ずあなたの質問に電話でも即答してくれますし面談にも応じてくれます。

商標専門弁理士が存在しないか、素人を専任担当に付けてあなたの仕事を把握していない場合には電話にも出ないし、素人が言葉を濁すだけなので怪しいと分かります。

(9)同業他社がどの指定商品や指定役務を取得したか参考にする

どこまでの範囲の指定商品や指定役務を選べばよいか不明なら、同業他社が押さえている登録商標の指定商品や指定役務を検索により調べて参考にしましょう。同業他社がどういった商品や役務について権利を得ているのかは調査して把握するようにすべきです。

どうやって同業他社の取得している商標権の指定商品や指定役務を調べるかは下記で解説しておきましたので、こちらも参考にしてください。

ファーイースト国際特許事務所

平野泰弘所長弁理士