契約が知的財産を守る

多くの場合、事業活動において知的財産は形成し、事業者は事業を成功に結びつけることが期待されています。事業活動において、契約が複数の当事者間で締結されることが通常であり、知的財産の形成及び活用においても、契約が重要な役割を果たします。

知的財産における契約の役割

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

1.契約の意義

 契約は、合意に基づき成立します。特別の方式が要求されるなど、一定の例外を除いて、口頭の合意でも成立します。

当事者は契約に縛られることになり、当事者が契約を遵守しない場合、裁判により救済を受けることができます。

契約は主に私法の領域の問題であるところ、私法の一般法は民法です。

民法では、明文の定めはないものの、契約の自由の原則が認められており、その一つには、契約の内容を決定する自由を挙げられます。

民法においては「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。」(民法91条)と規定されているところ、契約は法律行為ですので、当事者の意思によることになります。

 ただし、「法令中の公の秩序」に関する規定と異なる意思表示が除外されているとおり、契約の内容が適法性や社会的妥当性を欠く場合は、効力を有するものではありません。また、契約の内容が実現不可能であったり、確定不可能であったりすれば、同様に効力を有するものではありません。

 契約は、一定のルールの下、合意によってその内容を形成するものといえます。

2.契約書

 上述のとおり、一定の例外を除いて、契約は口頭の合意でも成立します。

 ただ、口頭の合意では、契約がその内容において不明確になるおそれがあります。

当事者は契約の内容を自由に決められるものの、当事者間において認識の相違が生じる可能性があります。

かかる可能性を低下させるために、契約書という書面を作成することが求められます。

 また、上述のとおり、契約は当事者を拘束するものであるところ、当事者が契約を遵守しない場合、裁判により救済を受けることができるものです。

ただ、裁判により救済を受けるためには、契約の成立を主張立証する必要があります。契約そのものは目に見えないものであるところ、契約の成立を主張立証する際、有力な武器となるのが契約書です。

契約書が真正に成立したものと認められる場合、特段の事情がない限り、その契約書に記載されたとおりの契約が成立したと認められることになります。

 契約書は、契約の内容を確かなものとするためにも、裁判の救済を受けるためにも、必ず作成しておく必要があります。

3.知的財産と契約

(1)知的財産

 知的財産は、知的財産基本法によれば「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。」(知的財産基本法2条1項)と規定されています。

 知的財産は無体物たる財産であるところ、法律の要件を充足したものは知的財産権を享受することができます。

例えば、発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいいます(特許法2条1項)

発明者の創作活動によって生み出された発明は知的財産ではあるものの、それだけでは知的財産権を享受するには不十分です。

特許出願を行い、発明に新規性・進歩性などが認められ、法律の要件を充足して初めて、特許を受けることができ、特許権を取得できます。

特許発明の独占的な実施権者は原則として特許権者のみとなります。

(2)特許権を例に

 知的財産に関し、契約はどのように関係するのでしょうか。代表的な知的財産権ともいえる特許権を例に知的財産と契約との関係を見てみましょう。

 まず、企業が製品を開発する際、自社のみでの開発では不十分である場合、他の企業や大学との間において共同の開発を考えることになります。共同開発には複数の当事者が携わることになるため、役割分担や成果の帰属などの事項につき、合意の上、共同開発契約が結ばれることになります。

 また、共同開発を行う前提として、複数の当事者が自らの情報を相互に開示する必要があります。

開示した情報が第三者に流出したり、共同開発以外の目的に使用されたりすることを防ぐため、開示した情報の取扱いにつき、取決めが必要です。このために当事者は秘密保持契約を結びます。

 共同開発の結果、発明を生み出した場合、特許権を享受することを望むときは、特許出願を行います。

発明は、複数の当事者が携わった共同開発の成果であるため、特許出願にも複数の当事者が出願人として関与するの通常です。

そのため、権利の持分や費用負担などの事項につき、共同出願契約の締結を検討することになります。

 発明につき特許を受けることができれば、特許権を享受することができます。共同開発の結果、複数の当事者が出願人となれば、特許権も複数の当事者が共有することになります。

各共有者は、原則、特許発明を実施することが可能です。各共有者は他の共有者の同意を条件に、特許権について、他者との間で特許実施許諾契約を結び、他者に特許発明を実施させることも可能です。

4.まとめ

 現代の社会において、多様な主体の協同が新たな価値の創造に結び付きやすいといえます。知的財産の形成及び活用においても多様な主体が関与することが必要であり、契約は重要な役割を果たすものです。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247

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