商標登録と著作権による保護との関係

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1. はじめに:商標登録と著作権の違い

知的財産という大きなカテゴリーの中に、商標法の商標登録による保護と著作権法の著作権による保護という二つの要素が存在します。これらはそれぞれ別々の根拠法に基づく保護制度であり、その機能や目的、そして適用されるシーンは大きく異なります。具体的にどのような違いがあるのか見ていきましょう。

商標登録は、企業や個人が商品やサービスを特定し、他者と区別するためのシンボルまたは目印です。ロゴ、ブランド名、スローガンなど、商業的な利用が目的とされ、登録することで独占的な使用権を得ることができます。この独占的使用権は、商標を無断で使用した他者に対して法的な措置を取ることができる点で保証されます。

一方、著作権は、特定の表現形式(文学、音楽、映像など)におけるオリジナルの創作物に自動的に与えられる権利です。著作権は、その創作物を複製、配布、公演、展示、デジタル伝送などの形で利用する権利を持つ者に保護を提供します。重要な点は、著作権は「登録」が必要ないということです。著作権法に定める著作物に該当する作品が創造された瞬間から自動的にその作品に付与されます。

以上の違いを理解することで、商標登録と著作権という異なる二つの概念を適切に活用することが可能となります。これらは、企業や個人が自身の知的財産を保護し、ビジネスを発展させるための重要なツールとなるのです。

2. 商標登録の概念

商標登録とは、特定の商品やサービスに関連する記号、デザイン、言葉、フレーズなどを法的に保護するための商標権を付与する行政処分であり、それが事業体や事業体の製品を消費者に識別させるためのユニークな印象を作り出します。

自社の商品やサービスが市場で他社のものと区別されることを保証し、それにより事業体のブランド価値を高め、消費者の混乱を防ぐことが主な目的とされています。

商標は文字、図形、記号、三次元の形状、色、音などが対象となり得ます。重要なのはそれが独自性を持ち、商品やサービスの出所を特定するための手がかりとなることです。また、商標は一度登録されると、一定の期間(日本では10年単位)有効であり、更新手続きを行うことで無期限にその権利を保持することができます。

商標登録の手続きは一般的に、登録を申請し、審査を経て承認登録されることで完了します。この手続きは、自分で行うことも、弁理士に依頼することも可能です。また、一度商標が登録されると、その商標を無断で使用した者に対し、使用停止を求めたり、損害賠償を請求するなどの法的措置を取ることが可能となります。

商標登録の最大の利点は、あなたのビジネスを特定のブランドやロゴ、名前によって保護し、他の企業が同様または類似の商標を使用してビジネスを混乱させることを防ぐことです。これにより、企業はその商品やサービスの信頼性と品質を保証し、その商標が象徴するブランドイメージを損なうことなく、市場での地位を確固たるものにすることができます。

3. 著作権の概念

著作権は、文学、音楽、芸術作品などの創作物に対する権利で、創作者が自動的に得る法的な保護権です。その保護範囲は、公衆による無許可の複製、公開、演奏、上映、放送、送信、貸与、翻訳、翻案など、作品の使用全般に及びます。

作品が著作権法上の著作物に該当するという要件付きですが、著作権は作品が創作された瞬間に発生し、その証明には登録や手続きは特に必要ありません。ただし、作品が著作権法の保護を受けるためには、一定の創作性を有することが必要です。つまり、単なる事実の列挙やデータの集積ではなく、個性を表現した独自の内容である必要があります。

また、著作権が保護する作品の種類は非常に広範で、小説、詩、映画、音楽、絵画、彫刻、建築作品、プログラムなど、様々な表現形態を含みます。このように、著作権は創作者の権利と利益を守るための重要な法制度であると言えます。

4. 商標登録と著作権による保護の関係性

商標登録により商標権を得る場合は、保護を希望する商標を、その商標を使用する商品役務を指定して特許庁に権利申請し、審査に合格して特許庁で登録を受ける必要があります。

また特許庁で願書を提出する時と、登録を受ける時の二段階で登録費用を支払う必要があります。

一方、著作権を得る場合には、著作権法に定める著作物を創作した時点で権利が発生します。権利発生に料金の支払いが必要なく、また文化庁等の専門官庁に登録する必要がない、というメリットがあります。

一見すると、審査を受ける必要もなく、費用を払う必要もないことから著作権が断然優れているように観えます。

4-1. 著作権は相対権

著作権は、権利発生に費用の支払いとか、登録手続きが必要のないことから簡単に発生します。しかし著作権が侵害された場合には、こちらの著作物が無断複製された事実を、裁判所で主張立証する必要があります。

著作権の侵害者が、こちらの著作物は知らない、見たことも聞いたこともないと関与を完全に否定した場合には、著作権を侵害した者が著作物を知っていて複製したことを権利者側が立証する必要があります。

つまり著作権の場合は、簡単に権利が発生するのですが、権利の行使が難しい側面があります。

4-2. 商標権は絶対権

これに対して、商標登録により発生する商標権は、お金もかかるし、審査を受けて合格しなければならないので、権利発生まで手間と時間とお金が必要になり大変です。

しかし一度商標権が発生すると、商標権を侵害した側が、登録商標を知らなかったことは、差止請求や損害賠償請求から免れる要件になっていないのです。

つまり商標権侵害者が、商標権の存在を知らない場合でも権利行使が可能になります。著作物の存在を知らない者は著作物の複製ができないわけですから、知っている・知らないという主観要件が大きな判断要素になる著作権の場合と大きく異なります。

商標権の存在を知らなくても権利行使ができる点で、著作権の場合よりも商標権の方が、第三者の権利侵害に対して権利行使が容易になっています。

つまり、商標権の場合は、権利の発生は簡単ではないのですが、権利の行使が著作権よりも簡単になっている側面があります。

4-3. 商標法による商標権と、著作権法による著作権とは同一物品に対して存在する場合がある

例えば、著作権法による著作物に該当する物品と、登録商標が付された同じ物品に対し、商標権による保護と、著作権による保護のダブルの保護が受けられる場合もあります。

4-4. 商標権と著作権が矛盾する場合の調整規定も存在する

特許庁の審査により審査に合格した商標であっても、他人の著作権を侵害するような商標は使用することができないとの規定が存在します(商標法第29条)。

商標法の規定で使用することができない、と記載されていますが、単に使用できないという意味ではなく、使用すれば著作権の侵害になる、ということです。

5. 商標登録と著作権の管理と保護

商標登録と著作権は、それぞれ異なる管理と保護の方法が求められます。以下では、これら二つの異なる知的財産権の保護について解説します。

まず、商標登録の管理についてです。商標登録による商標権を維持するためには、登録した商標が継続して日本国内で使用されていることを示す必要があります。日本国内で3年間、登録商標を使っていない場合には、第三者からの請求により登録が取り消される場合があります。

また、商標登録の有効期限(日本では10年単位)が近づいてきた場合、更新手続きを行うことが求められます。さらに、他社が自社の登録商標に類似した商標を登録しようとしている場合には、異議申立を行うなどして保護することが可能です。

次に、著作権の管理についてです。日本では、創作した作品には自動的に著作権が発生します。しかし、著作権侵害が起こった場合に備え、作品の創作日や著作権者の証明が必要となることもあります。このため、作品を作った日付を記録したり、公証役場で証明してもらうなど、証拠を確保しておくことが重要となります。また、作品が他人に無断で利用されている場合には、法的措置を取ることで著作権を保護することが可能です。

これらの具体的なケーススタディとしては、商標権の例としてオリンピックの五輪マークの無断使用等が挙げられます。一方、著作権の例としては、写真家の写真の無断利用、書籍の無断借用に対する保護を求める裁判などが注目されています。これらの事例は、商標登録と著作権がどのように管理され、保護されるべきかを示しています。

結論として、商標登録による商標権と著作権法による著作権はそれぞれ異なる管理と保護の方法を必要とします。これらの適切な管理と保護により、自社自身の知的財産を守り、競争力を維持することが可能です。

6. まとめ

商品のネーミングの多くは著作権法の著作物に該当しない場合が多く、商標登録しなくても著作権で守られると考えるのは早計です。登録商標と同じか似た商標を、商標権の権利範囲内で使用する無断行為は差止請求・損害賠償請求による民事上の救済措置や刑事上の救済措置も受けられます。弁理士・弁護士としっかり相談しつつ、最適な保護内容を整えることがよいでしょう。

7. 商標登録と著作権による保護に関するよくある質問

Q1. 商標登録と著作権の主な違いは何ですか?

A1. 商標登録は、特定の製品やサービスが特定の事業者から提供されることを示すものであり、登録することで法的に保護されます。一方、著作権は、独自の文学、音楽、芸術作品などを創造した人々が自動的に得られ、著作権法上の著作物に該当することを条件に、登録等の追加措置なく保護されます。

Q2. 商標を登録しないとどうなりますか?

A2. 商標を登録しないと、その商標を他の事業者に使用されるリスクがあります。また、商標権が認められないため、他人が同じまたは類似の商標を使用してビジネスを展開しても、それに対して法的な対応を取るのが難しくなります。

Q3. 自分が作った作品に自動的に著作権は発生しますか?

A3. はい、日本では、あなたが創作した作品には自動的に著作権が発生します。ただし、作品が著作権法による著作物に該当する等の制限があります。さらに侵害が起きた場合の証明負担のため、創作日や著作権者の証明が必要になることがあります。

Q4. 商標登録と著作権は重複して保護されますか?

A4. 商標登録と著作権は、それぞれ異なる法的概念であるため、異なる種類の保護が提供されます。しかし、一つの作品が商標に関する物品としても、著作物としても保護されることは可能です。例えば、キャラクターデザインは、商標登録によりブランドとしての識別性を保護し、一方で著作権によりデザインの創造的な要素を保護することができます。

Q5. 商標登録と著作権の保護期間はどれくらいですか?

A5. 商標登録の保護期間は日本では10年単位で、更新手続きを行うことで保護期間を10年単位でいくらでも延長することができます。一方、著作権の保護期間は原則として著作者の死後50年ですが、音楽や映像作品などは70年となっています。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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