商標に使用する商品役務はストレートに選ぼう

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1.「商標法上の商品・役務」とは

商標法上の「商品」「役務」とは以下の通りです。

商品とは「商取引の目的たり得るべき物、特に動産をいう」

役務とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう」

(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕より引用。)

しかし少し分かりにくいですよね?

少し乱暴な言い方ですが、「販売(提供)することで対価を得るもの」と考えていただければ分かりやすいかと思います。

2.商品・役務の指定方法

登録を受けるためには、その商標を使う「商品・役務」だけでなくその「商品・役務」が入るグループ(「区分」といいます。)も記載しなければなりません。

なお商品・役務が入る区分は第1類から第45類の45個あります。
(例:第30類 菓子 第44類 美容 等)

でもどの商品・役務がどの区分に入るのかなんて、すぐには分からないですよね。

そこで特許庁は、どの商品・役務がどの区分に入るのかを示した「類似商品・役務審査基準」(長いので「類似基準」といいます。)を作成してくれています。

なお「類似基準」では、類似する商品・役務ごとに「類似群コード」というコードをつけてグループ分けしていますので、どの区分に入るのかだけでなく、どの商品・役務同士が類似する仲間かも分かるようになっています。

「類似商品・役務審査基準」特許庁HPより引用
http://www.jpo.go.jp/ shiryou/kijun/kijun2/ruiji_kijun11-2017.htm

この「類似基準」に記載されている商品・役務は基本的に特許庁が認めているものですので、無駄な手間を省くためにも、指定する商品・役務には「類似基準」に記載されている表記を入れることをお勧めします。

ただ、ご覧いただくと分かりますが、かなり量が多いです。

そのため、この「類似基準」をめくって指定すべき商品・役務を探すのは効率的ではありません。

法律に縛られることなく、まずはその商標をどんな商品・役務の目印としたいのか、ご自身でしっかり検討してみてください。「類似基準」の出番はその後です。

3.商品・役務選びの際の豆知識

ここで商品・役務を選択する際に参考になるかもしれない面白い例をいくつかご紹介しましょう。

(1)「容器」だって商品です!

例えば皆さんが容器に「ファーイースト」という名前を表示したジュースを販売するとします。さてこの「ファーイースト」を登録すべき商品は何でしょう?「容器」でしょうか。それとも「ジュース」でしょうか。

やはり中身の「ジュース」ですよね。この「ファーイースト」は「ジュース」を買いたいと思う人が目印にするものですから。

では「容器」が商標法上の「商品」になる場面はないのでしょうか?

ここで少し視点を変えてみましょう。

飲料メーカーは通常自社で容器は製造しませんので、容器を製造しているメーカーから購入し、その容器に自社商品である飲料を詰めて世に送り出します。

つまり「容器」も商品であり、「容器」に使う商標もあるのです。

上の写真は同じビールの缶ですが、よく見るとそれぞれ違うマークがついています。これがそれぞれの缶を製造しているメーカーのマーク、つまり「容器」に使っている「商標」です。

一般消費者にはあまりなじみがないですし、控えめに表記されていますので、気づかなかったと思いますが、これから缶の飲料を手に取る機会がありましたらぜひ気にしてみてください。

(2)「鍵」だけ英語?

第6類の「キー」という商品があります。「なぜ英語?」と思われるかもしれませんが、「玄関の鍵」のようないわゆる「鍵」ではなく、機械要素の一つです。

みなさんが毎日お使いになる玄関の「鍵」も第6類に入る商品ですが、類似群コードが違います。つまり「キー」と「鍵」は同じ第6類に入りますが、類似する仲間ではないのです。

なお、機械要素の「キー」は第6類(類似群コード09F07)、「鍵」「南京錠」は第6類(類似群コード13C02)、「錠(電気式又は金属製のものを除く。)」は第20類(類似群コード13C02)、「電気式錠」は第9類(類似群コード09G55,09G99,11C01)に入る商品です。

ちなみに広辞苑によると、「鍵」は「錠の穴にさし入れて、これを開閉する道具」「更に広く、錠」、「錠」は「扉などに取り付けてしまりとする金具。鍵を用いて開閉する。」です。

(3)入れ替え戦

時代とともに新たな商品が生まれる一方、消えていく商品もあります。

「類似基準」は毎年見直しがされ、5年に一度、比較的大きな改訂があります。これは日本が採用している「国際分類」の改訂に合わせて行っているものです。

直近ですと今年の1月1日から現在の「国際分類第11-2017版対応」が使われるようになりました。

例えば、今回の改訂で「第9類 腕時計型携帯情報端末,スマートフォン」が追加され、反対に「第11類 懐炉灰」は削除されてしまいました。そして入れ替えではありませんが、「チョコレートスプレッド」は第29類に入る商品でしたが、第30類に移動です。

また今回の改正ではありませんが、今は「パン」と同じ類似群コード(30A01)が付されている「サンドイッチ,ハンバーガー,ホットドッグ」はかつては「おにぎり,弁当」と同じ類似群コード(32F06)の仲間でした。何だか不思議ですね。

さらに日本が「国際分類」を採用したのは平成4年からで、それ以前は日本独自の分類(旧分類)を使っていました。そのため、昔とは区分が全く違ってしまった商品が多々あります。

過去の登録商標の商品・役務をそのまま記載すると、特許庁から「このままでは登録を認めません」という通知(拒絶理由通知)を受ける可能性があります。ご注意ください。

なお役務の商標を登録する制度は、「国際分類」の採用と同じ平成4年からです。商標制度は明治17年に始まったので、役務は商標法の歴史からいったらまだまだ新参者ですね。

それでは、また。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子
03-6667-0247

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