先生!今度無効審判を請求しようと思ってます

商標法は、誤って登録された商標権に基づく権利行使を認めません。登録処分の適否の見直しと、当事者間で発生した紛争解決の手段として無効審判を設けられています。今回は商標登録無効審判をテーマに説明してみたいと思います。

先生!今度無効審判を請求しようと思ってます

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

1.まずはじめに

商標法には無効審判の制度が設けられており、一定の無効理由に該当する場合には、その登録処分には瑕疵があるとして審決によって登録処分を無効に導くことが出来ます。

その理由としては、本来であれば審査の過程で拒絶されるべき出願が過誤によって登録された状態を継続しておくことは、権利として存在することができないにもかかわらず、排他独占的という極めて強力な権利の行使が可能な状態を放置する結果となり妥当でないからです。

2.商標登録無効審判

商標法では無効審判について以下のように規定されています。

商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。
(第46条)

それでは、細かな内容を解説してみます。

(1)無効理由

無効理由は以下の理由に限られており、簡単に説明すると次のような内容になります。

  • 3条違反
  • 4条1項違反
  • 7条の2違反
  • 8条1項、2項、5項違反
  • 取消審判後の再登録禁止違反
  • 外国人の権利享有能力違反
  • 条約違反
  • 新しい商標における提出物件の要件違反
  • 商標登録出願により生じた権利を承継しない者による登録
  • 後発的理由

なお、後発的理由とは、登録後に外国人の権利享有能力の喪失した場合、登録後に条約違反に該当した場合、登録後に4条に規定する公益的理由に違反した場合、登録後に地域団体商標の要件を喪失した場合です。

また、「商標登録出願により生じた権利を承継しない者による登録」のような私益的な理由や「後発的理由」も無効理由に該当する点が、異議の申立ての理由(第43条の2)とは異なります。

(2)請求人

無効審判を請求するためには利害関係が要求されます。「利益なければ訴権なし」の原則が貫かれているためと解されます。

(3)時期

商標登録後に請求が可能になり、権利消滅後であっても一定期間の間は請求可能です。

権利消滅後の無効審判請求を認めた理由は、存続期間内の発生した損害の賠償を存続期間経過後に請求された相手が防衛手段として用いることができるようにするためです。

つまり、商標権が消滅した後であっても損害賠償請求は時効が成立しない限り可能ですが、後述のように無効審決が確定すれば権利は初めから存在しなかったものとみなされるため、損害の賠償請求に応じる責任から解放されるためです。

しかし、一部の例外を除き、除斥期間の適用があるため登録後5年を経過した後は原則として無効審判の請求はできなくなります。

すでに形成された既存の法律状態を尊重する観点から、瑕疵は治癒したものとして取り扱われるためです。

なお、仮に無効理由を有しているにも関わらず、除斥期間が経過してしまった商標権による権利の行使を受けた場合には、商標権の権利の効力が及ばない範囲である旨の抗弁や先使用による商標を使用する権利を有している旨の抗弁によって対抗することとなります。

(4)手続

審判請求書を特許庁長官に提出します。なお、不適法な審判請求は却下されます。

また、審判請求を受けた商標権者には無効理由に該当しない旨の答弁書を提出する機会が与えられます。

(5)効果

審理の結果、請求の理由が認められると商標登録を無効にすべき旨の審決が送達され、商標権は初めからなかったものとみなされます。

一方、請求の理由が認められなかった場合や、答弁書での反論が認められた場合には審判の請求は成り立たない旨の審決が送達され、商標登録は維持されます。

なお、審判請求を取り下げることも可能です。

あくまで当事者間の争いを解決することが目的ですので、審判以外の方法で争いが解決したのであれば取り下げの自由も当事者間にゆだねるためです。

ただし、答弁書の提出があった後は相手方の承諾が必要となり、また、審決確定後は取り下げることができなくなるため注意が必要です。

(6)不服申立て

審判の請求が認められた場合、認められなかった場合のいずれの場合であっても、審決謄本の送達のあった日から30日以内に限り東京高等裁判所に出訴することができます。

(7)その他

無効審判が請求された場合、専用使用権者や登録された通常使用権者には、審判が請求された旨の通知が出されます。

参加の機会を与え権利の消滅を防ぐための機会を与えるためです。

3.まとめ

実際に無効審判を請求する必要が生じる場面としては、おもに商標権侵害の警告を受けたときといえます。

商標権侵害の警告を受けた場合には、まずは慌てずに専門家に相談することをお勧めいたします。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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