商標「Python」の登録を認めてよいのか

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(1)そもそも商標「Python」を商標登録してもよいのか?

商標が登録できるかどうかは権利範囲の対象に左右される

すでに商標「Python」は特許庁で登録されていて、商標権が発生しています。この登録商標を使うと商標権侵害になる場合があるのですが、商標権侵害になるには条件があります。

「Python」の言葉自体が登録されたわけではない

商標「Python」が登録されたなら、プログラム言語としてのPythonが直ちに使えなくなるか、というと、それはありません。

商標を登録すれば、登録商標を業務上の表記として使用できるのは商標権者か、商標権者の許可をもらっている人だけになります。これが原則です。

ただしこの原則には裏があります。商標権がカバーする範囲には「商標登録の際に、権利範囲として指定された商品や役務(サービス)に関連するものだけ」、との制限があります。

このため電子計算機用プログラムの商品や電子計算機用プログラムの提供の分野に商標権が取得されていなければ、電子計算機用プログラムがらみでは商標権侵害の問題は生じません。

「Python」の登録商標ではプログラムのアイデアを保護できない

この点は多くの方が誤解しやすいポイントですので、注意して理解をお願いします。

仮に商標「Python」が電子計算機用プログラム関連に商標登録されたとしても、Pythonをプログラム言語として使用しているというだけでは商標権侵害にはなりません。

商標「Python」が電子計算機用プログラム関連に商標登録されている場合、電子計算機用プログラムのパッケージに商標「Python」を表示して、このプログラムを販売する行為なら商標権侵害が問われる場合があります。

これに対し、電子計算機用プログラムとしてのPythonを使っているだけで、どこにも「Python」との表記を表示していないなら、商標権侵害の問題は生じません。商標権はいわば名前の権利であり、この名前がどこにも表示されていない場合にはもはや名前を使っているとはいえないからです。

この通りですから、これまでプログラミング言語としてPythonを採用し、実際にコードをPythonで書いているというだけでは商標権侵害にはならないです。

Pythonをプログラムに使っている人はうろたえる必要はありません。冷静に対応をお願いします。

使用説明の中で「Python」という言葉を使えるのか

仮に商標「Python」が電子計算機用プログラム関連に商標登録されたとしても、プログラムの使用説明の中で、「Pythonを使う場合には、次の説明の通りにダウンロードしましょう」等のようにPythonとの言葉を使っても、それだけでは商標権侵害にはならないです。

商品の販売の際にパッケージに「Python」と表示するとか、電子計算機プログラムの提供に「Python」と表示する場合には商標権侵害になる場合がありますが、説明語句に「Python」が含まれるというだけでは商標法に定める商標の使用の規定にあてはまらないからです。

(2)商標「Python」の権利内容はどうなっている?

商標「Python」についてはすでに複数の登録があります。

商標登録は言葉自体を制限するものではなく、登録の際に指定した商品役務に関連して権利が発生する仕組みになっています。このため電子計算機用プログラムと全く関係のない分野では商標登録される場合があります(例えば、乗物用盗難警報器の分野とか、楽器の分野とか。)。

電子計算機プログラム関連の権利取得状況

登録商標「Python」

  • 現在のステータス:商標登録済み
  • 登録番号:第6042638号
  • 登録日:平成30(2018)年 5月 11日
  • 出願日:平成29(2017)年 5月 25日
  • 権利範囲:第9類の電気通信機械器具関係、第16類の定期刊行物関係、第41類の教育研修関係、第42類のデザイン関係

電子計算機プログラム関連は未取得

上記の登録商標には、商品としての第9類の「電子計算機計算機用プログラム」とか、役務としての第42類の「電子計算機計算機用プログラムの提供」は含まれていません

さすがに特許庁の審査官も、商標「Python」を電子計算機計算機用プログラムに認めることはありませんでした。

(3)商標「Python」が登録されている影響は?

商標として表示しなければまずは大丈夫

商標権は商標を表示する際に働く権利です。

このためプログラム言語としてPythonを使用している場合でもPythonの商標表記をどこにもしなければ、商標権侵害の問題は生じません。

またこれまで作成して運用しているPythonで作ったプログラムを廃棄処分する必要もありません。

上記に紹介した登録商標の事例では、肝心かなめの電子計算機用プログラム関連の権利取得に失敗していますので、神経質になる必要はないです。

肝心の電子計算機用プログラム関連の権利が入っていないのに、何でお金を払って商標登録したのでしょう?

お金を払ってタピオカミルクティーを注文したのに、タピオカが入っていない商品を受け取ったみたいな話だね。

電子計算機用プログラム以外では要注意

反面、商標「Python」は電子計算機用プログラムでは登録に失敗しているものの、電子計算機用プログラム以外では商標登録されている点に注意が必要です。

電子計算機用プログラムとしてのPythonの商標については、創業者が権利取得していない場合でも、後から関係のない一企業が独占できるものではありません。

反面、電子計算機用プログラム以外のアイテムでは商標権が発生している場合があります。

商標が一般的だから誰でも使える、というのは、あくまで具体的な商品等との絡みで決まります。電子計算機用プログラムの分野で一般的な商標であったとしても、他の分野では一般的とはいえない場合もあります。

このため商標「Python」を商売の表示として使う場合には、どの分野について商標権が発生しているのか確認してから使うことに注意しましょう。

(4)まとめ

仮に電子計算機用プログラムで商標「Python」が商標登録されたとしても、登録商標が普通名称化してしまう問題があります。

最初は私有地であった、今では特段管理されていない駅前の空き地が、怒涛の人波に押し切られて、ついにはみんなの共有地になってしまうように、登録商標が普通名称化して商標権の権利行使ができなくなる場合もあります。

こうなってしまっては何のために商標登録したのかわからなくなります。

せっかく商標登録したとしても、世間をお騒がせする横取り商標扱いされて消費者にそっぽを向かれたら、これまた何のためにお金を払って登録したのかわからないです。

何を商標登録するかはよくよく考えて進めることにしましょう。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

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「商標「Python」の登録を認めてよいのか」への2件のフィードバック

    • ご指摘ありがとうございます!さっそく訂正しておきました。
      ちなみに「PyTHOn」も「PYTHON」も「Python」も「python(図形)」も登録されていますが、結論は同じです。

      返信

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