商標審査便覧

商標登録出願の願書に記載された商標の審査における扱いについての解説です。

商標法施行規則別表の表示に従っていない役務表示についての取扱い

(総説)

商標法施行規則別表及び類似商品・役務審査基準に掲載されている小売等役務は例示であるため、そこに掲載されていない小売等役務も存在するところ、例えば、以下のような役務を指定した商標登録出願については、以下のとおり取り扱うこととする。

なお、その場合の類似群コードについては、同様の商品を取り扱う小売等役務の類似群コード(35K02-35K21)及びその取扱商品に相当する商品の類似群コードを付与し、相当する小売等役務がない場合には、「35K99」及びその取扱商品に相当する商品の類似群コードを付与することとする。

1.商標登録出願の願書に記載された小売役務商標の記載

小売等役務に含まれるサービス(便益)の一部を、指定役務として表示する場合(例えば、「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する品揃え・陳列・接客サービスの提供」。なお、○○○は、商品名である。以下同じ。)は、「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正させる。

(説明)
小売等役務は、小売及び卸売の業務において行われる総合的なサービス活動を一の役務として扱うものであり、個々の便益の提供を一の役務とするものではない。
したがって、上記の総合的なサービス活動の個々の要素を小売等役務の「便益」に代えて表示することは、小売等役務の適切な表示ということはできない。このため、サービス活動の個々の要素を「便益」の文言に置き換え、「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の表示に補正をさせることとする。

2.商標登録出願の願書に記載された事業支援サービスと小売等役務の扱い

「the bringing together, for the benefit of others, of a variety of goods (excluding the transport thereof), enabling customers to conveniently view and purchase those goods.」又は「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること。」は、改正後の商標法の下では、事業支援のための役務か、小売等役務かが明確ではないため、商標法第6条の拒絶理由通知をもって、その意図を確認する。

その結果、上記表示が事業支援の役務である場合は、「(other than retail services and/or wholesale services.)」「(小売又は卸売りの業務において行われる場合を除く。)」のような文言を付加した表示に補正させ、小売等役務である場合は、「Retail services and/or wholesale services for ○○○.」又は「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のように補正させる。

(説明)
平成19年3月31日以前においては、国際出願の英語表示「the bringing together, for the benefit of others, of a variety of goods (excluding the transport thereof), enabling customers to conveniently view and purchase those goods.」及び、これに対応した日本語表示「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること。」が役務の表示として採用されてきたところ、これらは、小売等役務を商標法上の役務としていなかった平成19年3月31日以前の商標法の下では、上記の役務表示中の「others」、「他人」は、商品の販売業者を意味するものとし、これらの役務を事業支援の役務として位置づけて採用しているものである。そのため、類似群コードも「35B01」を付与して扱ってきている。

しかし、小売等役務が商標法上の役務に含まれることとなる平成19年4月1日からは、「others」、「他人」が商品の販売業者のみに限らず、商品の購入者を意味するものとも解され得ることとなる。したがって、平成19年4月1日以降の出願において、上記表示で指定された場合には、小売等役務か、事業支援の役務なのかが明確でないことから、先ずいずれの役務を意図したものであるかを確認する(商標法第6条第1項の適用)こととする。

その結果、小売等役務である場合は「Retail services and/or wholesale services for ○○○.」、「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のように、商標法施行規則別表の例示に即した表示に補正させることとする。
一方、事業支援の役務である場合は、「(other than retail services and/or wholesale services.)」、「(小売又は卸売りの業務において行われる場合を除く。)」のような文言を付加した表示に補正させることとする。

3.その他

(1)「○○○の小売」「○○○の卸売」の表示について
「○○○の小売」「○○○の卸売」の表示については、それが商品を指定したものであるのか、小売等役務を指定したものであるのかが明確でないことから、商標法第6条の要件を満たしていないものとして、いずれを意図したものであるかを確認することとする。
その結果、上記表示が小売等役務である場合には、「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正させる。また、上記表示が商品である場合には、商品として「○○○」に補正させる。

(2)「○○○の小売等役務」「○○○のリテイルストアサービス」の表示について
「○○○の小売等役務」「○○○のリテイルストアサービス」については、小売等役務を意図したものであることが明らかであるが、適正な表示とは認められないため、商標法第6条の通知を行い、「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正させる。なお、上記表示を商品に補正することは要旨の変更であるから認めない。

(3)マドプロ出願における「retail store services」の表示について
「retail store services」の表示をもって小売等役務を表示することについては、その取扱商品が不明であり、小売等役務の内容が明確でないから、商標法第6条の通知を行い、取扱商品を明確にした小売等役務として「Retail services and/or wholesale services for ○○○.」に補正させる。なお、上記表示を商品に補正することは要旨の変更であるから認めない。

(4)「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供に関する情報の提供」の表示について
このような表示については、その役務の内容を明確にするため商標法第6条の通知を行い、次の(1)又は(2)のいずれかに補正させる。

  • 情報の提供目的が、他者が行う小売等役務に関する情報を業としてまとめて提供するものと理解される場合には、「商品の販売に関する情報の提供(35B01)」に含まれる役務として扱われることから、当該表示に補正させる。
  • 自己が行う小売等役務の販売促進を目的とする場合には、自己の役務に関する広告とみられるため、このような表示は認められないことから、取扱商品を明確にした「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正させる。

(5)総合小売等役務の表示から「衣料品」・「飲食料品」又は「生活用品」のいずれかを削除した小売等役務の表示について

例えば、「衣料品・生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については、その内容がもはや総合小売等役務でなく、特定小売等役務であるから、商標法第6条の通知を行い、特定小売等役務として明確な表示(例えば、「被服・家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」)に補正させる。
なお、上記表示に取扱商品を追加して総合小売等役務に補正することは要旨の変更であるから認めない。

(6)取扱商品に代えてその業態を表示するような小売等役務の表示について
例えば、「コンビニエンスストアにおける小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、ホームセンターにおける小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等については、商標法第6条の通知を行い、取扱商品を明確にした「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正させる。

 

特例小売商標登録出願人の子会社、系列会社、組合構成員、加盟店等の業務に係る小売等役務の商標の使用を商標登録出願人の業務に係る小売等役務の商標の使用として認める場合の取扱い

特例小売商標登録出願においては、その出願に係る商標が「自己の業務」に係る小売等役務について使用をしているものであることを証明しなければならないが、それが実際には出願人の子会社、系列会社、組合構成員、加盟店等の事業活動が事実上出願人の支配下にあること、すなわち出願人と出願に係る商標の使用者とが一定の関係にあること、が証明されれば、それを出願人の「自己の業務」に係る役務に使用しているものとして認めることとする。

1.出願人との関係が会社法上の子会社である場合

出願人との関係が会社法上の子会社である場合 会社法(平成十七年法律第八十六号)上の子会社とは、会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。(会社法第2条第1項第3号)。 上記の「法務省令で定めるもの」は、次のとおりである。 会社が他の会社等(会社(外国会社を含む)、組合(外国における組合に相当するものを含む)その他これらに準ずる事業体)の財務及び事業の方針を支配している場合における当該他の会社等((会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)第3条第1項、同第2条第3項第2号)(別紙1)参照。) このような会社法上の子会社である場合においては、その事実を客観的な証拠により証明しなければならない。

2.出願人の会社の事業活動が事実上出願人の支配下にある場合

出願人との関係が会社法の子会社であるとの要件を満たさないが資本提携の関係があり、かつ、その会社の事業活動が事実上出願人の支配下にある場合

上記の事実は、それが客観的に把握できるような証拠を提出することによって証明しなければならない。この証拠は資本提携の存在が確認できれば良いこととする。 上記(2)の事実は、それが客観的に把握できるような「会社案内・カタログ・定款・パンフレット・株主総会関係資料」等の証拠を提出することにより証明しなければならない。
この場合の証明書類は、その会社の事業活動が事実上出願人の支配下にあること、例えば、出願人はその会社に役員を派遣し又はその会社の経営を恒常的に指導していること等が認定できるようなものでなければならない。 なお、事実を証明する資料は、(別紙2)の「自己の業務に関する事情説明書」を提出することによって代えることができる。

3.出願人との関係が団体の構成員である場合

団体が構成員に使用させる商標を出願する場合においては、構成員の業務に係る小売等役務の商標の使用を、団体の出願に係る商標の使用とみることができる。 この場合には、当該団体の構成員であることを証明する書面の提出を必要とするものとする。

4.出願人との関係が加盟店である場合

フランチャイズ契約に基づき加盟店であるフランチャイジーが行う業務に係る小売等役務をフランチャイザーが指定役務として出願した場合には、当該加盟店の業務に係る小売等役務について使用する商標を出願人の「自己の業務」に係る小売等役務について使用をする商標とみることができる。 この場合には、当該契約書の写しの提出を必要とするものとする。

5.子会社等の小売等役務の商標の使用についての留意点

出願人が他人(子会社等)の業務に係る小売等役務の商標の使用を自己の業務に係る小売等役務の商標の使用とする場合においては、出願人との関係を証明するほかに、その他人が指定役務に係る業務について商標の使用を行っていることについても証明しなければならない。

6.出願に係る商標が出願人の名称と相違する場合の取扱い

他人の業務に係る小売等役務に使用する商標の出願において、その業務に係る小売等役務についての商標が出願人の「自己の業務」に係る小売等役務についての商標の使用と認められるものであったとしても、出願に係る商標が出願人の名称と相違する名称である場合(例えば、出願人の名称が「ABC株式会社」である場合に、出願に係る商標が「株式会社DEF」のように商号が相違する場合)は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとする。

(別紙1) 会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)抜粋(第3条第1項及び第3項)

(子会社及び親会社)
第三条 法第二条第三号 に規定する法務省令で定めるものは、同号に規定する会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等とする。

2 (略)

3 前二項に規定する「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」とは、次に掲げる場合(財務上又は事業上の関係からみて他の会社等の財務又は事業の方針の決定を支配していないことが明らかであると認められる場合を除く。)をいう(以下この項において同じ。)。 一 他の会社等(次に掲げる会社等であって、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下この項において同じ。)の議決権の総数に対する自己(その子会社及び子法人等(会社以外の会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等をいう。)を含む。以下この項において同じ。)の計算において所有している議決権の数の割合が百分の五十を超えている場合

  • イ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等
  • ロ 会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社
  • ハ 破産法 (平成十六年法律第七十五号)の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等
  • ニ その他イからハまでに掲げる会社等に準ずる会社等 二 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が百分の四十以上である場合(前号に掲げる場合を除く。)であって、次に掲げるいずれかの要件に該当する場合

イ 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数(次に掲げる議決権の数の合計数をいう。次号において同じ。)の割合が百分の五十を超えていること。

  • (1) 自己の計算において所有している議決権
  • (2) 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
  • (3) 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権

ロ 他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の総数に対する次に掲げる者(当該他の会社等の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものに限る。)の数の割合が百分の五十を超えていること。

  • (1) 自己の役員
  • (2) 自己の業務を執行する社員
  • (3) 自己の使用人
  • (4) (1)から(3)までに掲げる者であった者

ハ 自己が他の会社等の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。

ニ 他の会社等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額に対する自己が行う融資(債務の保証及び担保の提供を含む。ニにおいて同じ。)の額(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を含む。)の割合が百分の五十を超えていること。

ホ その他自己が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること。

三 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数の割合が百分の五十を超えている場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含み、前二号に掲げる場合を除く。)であって、前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する場合

(別紙2)
自己の業務に関する事情説明書

1.「小売等役務に係る使用に基づく特例の適用主張書」に添付の「商標の使用の事実を証明する書類」における商標の使用者は乙社であるが、出願人甲社と乙社は、

  • 甲社は、乙社に対する発行済株式保有率○○%の資本提携がある。
  • 甲社は、人事・資金・技術・取引等の関係を通じて、乙社の財務・営業の方針に対して重要な影響を与えている。

・・・(中略)・・・ の事情にあり、乙社の事業活動が事実上甲社の影響下にあって、実質的には親子会社と同等の関係にある。

2.したがって、今般、意匠法等の一部を改正する法律(平成18年法律第55号)附則第8条第1項に規定する使用に基づく特例の適用を主張するに当たり、出願人甲社は、本願商標を自己の業務に係る役務に使用をしている商標として上記の主張をするものである。

3.以上のとおり相違ありません。

平成 年 月 日 (甲社)住所 名称 代表者 (印)

(乙社)住所 名称 代表者 (印)

4.添付資料 ・・・・・・・・・・ 資本提携の存在を示す書類 1通