先生、商標ってどういうときに類似になるんですか?

商標の類似は、特許庁が公表する商標審査基準〔改訂第13版〕によれば、

「商標の類否は、出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。」
商標審査基準〔改訂第13版〕

とされています。
しかし、この判断方法は特許庁が審査を行う場合に用いる基準であって、裁判所はまた独自の基準で商標の類似を判断します。今回は「大森林」と「木林森」とが類似するか否かが争われた事件「大森林事件」を題材に取り上げてみたいと思います。

先生、商標ってどういうときに類似になるんですか?

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

1.はじめに

争われた内容は「大森林」と「木林森」が類似するか否かです。第一審、第二審、はいずれも商標が非類似であると判断しています。

2.大森林事件

 1 商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであって(最高裁昭和三九年(行ツ)第一一〇号同四三年二月二七日第三小法廷判決・民集二二巻二号三九九頁参照)、綿密に観察する限りでは外観、観念、称呼において個別的には類似しない商標であっても、具体的な取引状況いかんによっては類似する場合があり、したがって、外観、観念、称呼についての総合的な類似性の有無も、具体的な取引状況によって異なってくる場合もあることに思いを致すべきである。
最高裁平4.9.22(一部抜粋)

商標の類比判断の基準を示しています。

この基準は最高裁の過去の判例「氷山事件」で示された基準を踏襲しています。

 2 本件についてこれをみるのに、本件商標と被上告人標章とは、使用されている文字が「森」と「林」の二つにおいて一致しており、一致していない「大」と「木」の字は、筆運びによっては紛らわしくなるものであること、被上告人標章は意味を持たない造語にすぎないこと、そして、両者は、いずれも構成する文字からして増毛効果を連想させる樹木を想起させるものであることからすると、全体的に観察し対比してみて、両者は少なくとも外観、観念において紛らわしい関係にあることが明らかであり、取引の状況によっては、需要者が両者を見誤る可能性は否定できず、ひいては両者が類似する関係にあるものと認める余地もあるものといわなければならない。
最高裁平4.9.22(一部抜粋)

「大森林」と「木林森」が見た目と連想する意味が紛らわしく、使い方や見方によっては取り違える可能性があると判断しています。

 3 原審は、観念による類否について説示するに当たり、本件商標及び被上告人標章が付されている頭皮用育毛剤等の需要者は育毛、増毛を強く望む男性であるところ、かかる需要者は当該商品に付された標章に深い関心を抱き、注意深く商品を選択するものと推認されるなどとしているのであるが、必ずしも右のような需要者ばかりであるとは断定できないことは経験則に照らして明らかであるし、上告人は、本件商標権について通常使用権を許諾し、通常使用権者は薬用頭皮用育毛料に本件商標を付してその関連会社に販売させていると主張しているのであるから、この主張事実から現れる可能性のある商品の取引の状況も勘案した上、本件商標と被上告人標章との類否判断がされなければならない。したがって、原審がした右の推認事実のみをもってしては、両者が類似しないとする理由として十分でないといわざるを得ない。原審は、右のほかに、本件商標が使用される指定商品の想定可能な取引の状況及び被上告人標章が使用された被上告人商品について現に行われている取引の状況を考慮しても、両者は観念において類似するものと認めることはできないとしたのみであり、被上告人商品が訪問販売によっているのかあるいは店頭販売によっているのか、後者であるとしてその展示態様はいかなるものであるのかなどの取引の状況についての具体的な認定のないままに、本件商標と被上告人標章との間の類否を認定判断したものであって、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の誤りないしは理由不備の違法があるというべきである。
最高裁平4.9.22(一部抜粋)

3.まとめ

商品の需要者が増毛を強く望む男性であることに着目し、両商標が生い茂る樹木を連想する漢字三文字から成り立っているため、外観だけでなく観念においても類似する可能性があると判断しています。

また、商品の販売方法等の取引の実情に対する原審の検討の不足も指摘しています。

そこで、結論は原審の下した判決を破棄、差し戻しということになりました。

確かに、外観は似ているようにも思えますが、観念が商標の類否を判断する際のポイントとなることはあまり多くはありません。

また、主たる需要者や、取引の実情といった比較的わかりにくい内容にまで言及した貴重な判決と言えると思います。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

よく読まれている記事

議論に参加する

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です