「甲府ブランド」の旗印となる商標・「甲府之証」

山梨県甲府市は、戦国武将・武田信玄とゆかりの深い土地です。市内には、武田神社や甲斐善光寺をはじめ、多くの史跡が残されており、この街が積み重ねてきた歴史を感じ取ることができます。そして甲府市は、数年前から「甲府ブランド」として認定した商品に、「甲府之証(こうふのあかし)」という認証マークを付ける取り組みを行っています。1つのブランドとして確立することで、地域経済の活性化を目指しているのです。この「甲府之証」は、商標として登録もされています。ここでは、そんな街の試みとブランドを守る商標についてご紹介します。

(1)甲府の地が誇る逸品ぞろい「甲府ブランド認定制度」

(1–1)テロワールから生まれた「甲府の良きモノ」

甲府市の特産品や資源・技術を活用した商品など、「甲府らしさ」を生かしたものを1つのブランドとして認め、その価値を高めていくことで、地域経済の活性化につなげていきたい。そんな思いから、「甲府ブランド認定制度」が2013年度に制定されました。

そこに込められているのは、「この商品は甲府のテロワールから生まれた良きモノである」という誇りです。

「テロワール」とは、ワイン用語として使われるフランス語です。
「土壌」という意味を含みますが、ワインに関してはもっと広い意味合いをもち、ぶどうがなり、ワインができあがるまでの環境すべてを指しています。

同じ地域では、土壌や地形、気候、技術などが共通するため、収穫される農作物や、代々受け継がれていく技術にも統一性がみられるのです。

「甲府ブランド認定制度」はこれをさらに大きくとらえ、甲府という土地や風土によって培われた特産品や、甲府で磨かれた技術を使って製造されたものも認定品に含んでいます。

さまざまな歴史を経てきた甲府の地だからこそ、生み出されるものがあるのかもしれませんね。

(1–2)甲府の魅力を広く伝える3つの部門

そして2013年度から始まった「甲府ブランド認定制度」は、2015年度に「食品」「クラフト系」「農林産物」という3つの部門が設定されました。
これによって、甲府の魅力を広く伝えることのできる商品のジャンルが広がりました。

また、「甲府之証」についても、各部門のイメージに合わせたものが作成されています。

(2)商標・「甲府之証」について 

甲府市に認められた「良きモノ」にだけ、「甲府之証」が付けられているんだね。

そして、3つの部門の「甲府之証」は、それぞれ商標登録されているのよ。どんなものなのか、みていきましょう。

(2–1)ブランドとして認めた印 〜食品部門

食品部門の「甲府之証」は、元々、2013年度に始まった甲府ブランド認定制度のものでした。そして、2年後に3つの部門がつくられた際、食品部門のものとなりました。

このデザインに込められているのは、「甲府ブランドとして認め、印を押す」という意味です。
「証」として、消費者に伝わりやすいデザインですね。

甲府之証/KOFU NO AKASHI(商標登録 第5922882号)


特許庁の商標公報・商標公開公報より引用

  • 権利者:甲府市
  • 出願日:2016年5月23日
  • 登録日:2017年2月17日

区分は以下の通りです。

  • 第30類「山梨県甲府市で製造または販売される菓子、山梨県甲府市で製造または販売される調味料、山梨県甲府市で製造または販売される酵母、山梨県甲府市で製造または販売される穀物の加工品、山梨県甲府市で製造または販売される食用粉類」
  • 第32類「山梨県甲府市で製造または販売されるビール、山梨県甲府市で製造または販売される果実飲料、山梨県甲府市で製造または販売される飲料用野菜ジュース」
  • 第33類「山梨県甲府市で製造または販売される清酒、山梨県甲府市で製造または販売される果実酒、山梨県甲府市で製造または販売される薬味酒」

(2–2)「宝石の街」・甲府にふさわしい華やかなデザイン 〜クラフト系部門

クラフト系部門では、羽ばたく鳥が描かれたデザインになっています。

この鳥は、1984年に甲府市の鳥に指定されたカワセミです。
翡翠のような鮮やかな羽色をもつカワセミは、「飛ぶ宝石」と呼ばれています。
古くから宝石加工が盛んであり、「宝石の街」と呼ばれる甲府にふさわしいモチーフですね。

このデザインには、製作者たちが伝えたいと願う「甲府らしさ」を、カワセミの羽ばたきに乗せて世界へ発信できるように、という想いも込められています。

甲府之証/KOFU NO AKASHI/MADE IN KOFU(商標登録 第5937779号)


特許庁の商標公報・商標公開公報より引用

  • 権利者:甲府市
  • 出願日:2016年5月23日
  • 登録日:2017年4月7日

区分は以下の通りです。

  • 第14類「山梨県甲府市産の貴金属、山梨県甲府市産の宝玉およびその原石、山梨県甲府市産の身飾品」
  • 第21類「山梨県甲府市産の台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く)、山梨県甲府市産の植木鉢」

(2–3)生産者と消費者を結ぶ象徴 〜農林産物部門

農林産物部門は、部門のなかに細分化された5つのカテゴリーがあり、以下のような特徴があります。

《農林産物部門・5つのカテゴリー》

  • 甲府市の誇る至高の逸品である「特選」
  • 熟練の技が光る品「巧」
  • いま甲府にしかない、もしくは、甲府の伝承的な農林産物「伝承」
  • 産地化されており、市場評価の高い農林産物「特産」
  • 直接、地域振興につながる農林産物「振興」

これらのカテゴリーの「甲府之証」では、下記のリボン部分「MADE IN KOFU」の下に、「特選」「巧」など、それぞれの文字が加えられています。

また、リボンのデザインには、生産者と消費者を結びつけるという意味が込められています。

甲府之証/KOFU NO AKASHI/MADE IN KOFU(商標登録 第5922883号)


特許庁の商標公報・商標公開公報より引用

  • 権利者:甲府市
  • 出願日:2016年5月23日
  • 登録日:2017年2月17日

区分は以下の通りです。

  • 第29類「山梨県甲府市産の食肉、山梨県甲府市産の肉製品、山梨県甲府市産の加工野菜および加工果実」
  • 第31類「山梨県甲府市産の野菜、山梨県甲府市産の果実、山梨県甲府市産のとうもろこし、山梨県甲府市産の種子類、山梨県甲府市産の花」など

(3)「甲府ブランド」に認定されているものとは?

では、どのようなものが実際に「甲府ブランド」として認定されているのでしょうか?

(3–1)食品部門の認定品

食品部門では、7つの商品が認められています。菓子や酒、加工品など、種類もさまざまです。

号数 商品名 製造者・販売者 認定日
認定1号 きみひめ大福 あんこ工房 いつみ庵 2013年6月27日
認定2号 shunkaロール 株式会社旬果市場 2014年3月12日
認定3号 甲州地どり(各種) 甲州地どり市場 2014年3月12日
認定4号 葡萄屋 kofu レーズンサンド 葡萄屋 kofu 2015年5月14日
認定5号 清酒「純米大吟醸 帯那(おびな)」 帯那地域活性化推進協議会/太冠酒造株式会社 2016年3月28日
認定6号 甲州金まんじゅう 金精軒製菓株式会社 2017年1月25日
認定7号 甲府ぶどうの葉カステラ 有限会社早川ベーカリー 2017年8月8日

(3–2)クラフト系部門の認定品

クラフト系部門では、現在、1つのジュエリーシリーズが認定されています。
ここには、リングやネックレス、ピアスなどの各アイテムが含まれています。

号数 商品名 製造者・販売者 認定日
認定1号 TO LABO×1DK(トゥーラボ ワンディケィ)シリーズ 1DK Jewery Works/TO LABO 2015年10月27日

(3–3)農林産物部門の認定品

農林産物部門は、部門のなかに5つのカテゴリー(「特選」、「巧」、「伝承」、「特産」、「振興」)があります。そのなかから認定されたものは、以下の表の通りです。

カテゴリー 号数 種類 商品名 問い合わせ先 認定日
「特選」 認定1号 ぶどう シャインマスカット 甲府市農業協同組合果実部 2016年6月17日
  認定2号 なつっこ 中道農産物加工直売組合 2017年8月4日
「巧」 認定1号 なつっこ 柿嶋美保子 2017年8月4日
「伝承」 認定1号 味噌 くいしき味噌 上九ふれあいの里 2016年2月19日
「特産」 認定1号 鶏肉 甲州地どり 甲州地どり生産組合 2016年2月19日
  認定2号 豚肉 甲州信玄豚 オオタ総合食品株式会社 2016年2月19日
  認定3号 ほうれんそう ちぢみほうれんそう 中道農産物加工直売組合 2016年2月19日
  認定4号 とうもろこし ミルフィーユ 甲府市農業協同組合蔬菜部/
JA甲府市直売所穫れたてLand山城店
2016年6月7日
  認定5号 とうもろこし しあわせコーン 甲府市農業協同組合蔬菜部 2016年6月7日
  認定6号 とうもろこし きみひめ 中道農産物加工直売組合/
笛吹農業協同組合中道北支所
2016年6月7日

*「振興」の認定品の記載はありません。

(4)まとめ

豊かな自然と歴史の奥深さにふれられる街・甲府。週末にふらりと訪れ、散策と温泉を満喫して、「甲府之証」の付いた商品を手に入れて帰ってくるのもいいですね。

「甲府之証」は商標登録によって保護されているため、第三者が不正に使用することはできません。そのため、初めて甲府を訪れた観光客も、「証」が付けられた品であれば安心して購入することができます。

また、「甲府ブランド」は、今後、さらに価値を高めることで、市のイメージアップや観光客増加への貢献も期待されています。

地域のさらなる発展を目指した住民たちの取り組み。商標はその旗印となり、成功への後押しをしてくれるものでもあるのです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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