区分を指定しないで商標登録する方法

商標登録出願の際に、区分とか、商品役務を決め打ちしないで登録したい、と希望される方が多くいます。結論からいうと、商標出願の願書を特許庁に提出する時点で、区分とか、商品役務を記入していないと登録を受けることができません。特許庁に提出する願書に記入する区分や商品役務の意味について説明します。

区分を指定しないで商標登録する方法

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

(1)願書に区分や商品役務を書かないとどうなるか

権利範囲を限定せずに商標権を取得したい

商標権を取得する際に、その権利範囲を限定する区分や商品役務を記載したくない、という要望が多くよせられます。

願書に区分とか、商品役務の情報を記入してしまうと、記入した商品役務に関連する範囲内でしか商標権を取得できないからですね。

今後、どのような商品とか役務をビジネスで扱うか分からない場合もあります。このため商標登録の願書を特許庁に提出する時点で、今後ビジネスで扱う商品や役務の範囲を決定できない問題が生じます。

区分や商品役務を記入せずに願書を提出するとどうなるか

仮に商標登録出願の願書に、区分とか、商品役務の情報を一切記入せずに出願したとします。そうするとその出願は最終的に却下されてしまうことになります。

商標法では、願書に商品役務や、その商品役務のある区分を記載しなければならないことが定められています。

第五条 商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。
三 指定商品又は指定役務並びに第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分
商標法条文 第5条第1項第3号から引用

仮に願書に区分や商品役務の情報が記載されない場合、あとからこれらの情報を追記することは禁止されています。

第十六条の二 願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
商標法条文 第16条の2から引用

願書に記載されていない区分や商品役務を後から追記することは上記の要旨の変更になります。このため、願書に書いていない事項についてはそれを正す手段がないことになります。

第十八条の二 特許庁長官は、不適法な手続であつて、その補正をすることができないものについては、その手続を却下するものとする。
商標法条文 第18条の2から引用

結局、特許庁に受理してもらえる程度の書面に直すまでの補正ができないわけですから、最終的には商標登録の出願自体の手続が却下されます。

結論として、区分や商品役務を指定しないで出願しても、出願自体が却下されてしまうことになるため、特許庁に納入した印紙代についてまるまる損をすることになります。

(2)商標の区分は何を定めるものなのか

商標の区分は、ずばり、特許庁に支払う料金の基準です。区分数の増加にほぼ比例して、特許庁に納入する費用が増えます。

商標の区分は、商標権の権利内容とは直接関係はないです。

どの区分について申請するかの事前検討が重要

将来使う予定もない区分について権利申請するのは、支払った費用がむだになります。

逆に、費用を抑えるあまり、必要な区分について権利申請しないのは、他社にこちらの商標を無断で使用されてしまう要因になります。

このためどの区分に権利を申請するかについては、商標専門の弁理士と十分に協議をして決定する必要があります。

区分を指定してもその区分に属する権利全てを指定したことにはならない

商標の願書に区分を記載すると、その区分の記載により、自動的にその区分に属する全ての権利が得られると勘違いされている方が多いです。

区分は、あくまで特許庁の料金体系の基準となるものですから、区分を記載するだけでは権利内容を指定したことにはなりません。うっかりしやすいところですから、特に注意してくださいね。

(3)商標の商品役務は何を定めるものなのか

商標の願書に記載される商品や役務が、商標権の権利内容を定める要素になります。このため、願書に記載した商品役務とは関係がないもの、願書にそもそも記載しなかったものには商標権の効力は働かないです。

このため権利が必要な商品役務については具体的に願書に記載しておく必要があります。

願書にはどの程度の内容の商品役務を記載するのか

商標の願書を作成するに当たって、どこまで願書に商品や役務を記載するのか悩むと思います。

実際に願書に記載する商品や役務については類似商品役務審査基準を参考に決めていきます。なお、特許庁の発表する類似商品役務審査基準はほぼ毎年のように改定があります。最新の情報をみるように注意しましょう。

類似商品役務審査基準

類似商品役務審査基準に記載がある場合

類似商品役務審査基準に記載がある場合は、素直にその記載を踏襲しましょう。

類似商品役務審査基準に記載がない場合

類似商品役務審査基準に記載がない場合は、できるだけ具体的に商品役務を記載する必要があります。

この場合、類似商品役務審査基準に記載がある商品役務の下位概念までを全て記載する必要はありません。

例えば、商品が「ジャケット」の場合は、願書には「ジャケット」を指定すれば十分です。「袖なしジャケット」、「赤色のジャケット」、「子供用のジャケット」、「東京都で販売されているジャケット」などのような下位概念の記載は不要です。

上記の「袖なしジャケット」は、商品「ジャケット」に、「袖なし」との限定がついたものと解釈できます。そうすると、商品「ジャケット」を指定しておけば十分です。下位概念の商品「袖なしジャケット」は権利範囲に含まれていますので、わざわざ記載する必要はないです。

*もし下位概念まで記載していないと権利が取得できないなら、ほぼ無限に下位概念の商品を列挙する必要がでてきます。商標法はそこまでは求めていません。

(4)まとめ

商品や役務の内容によっては、関連する商品や役務が異なる区分に分散している場合もあります。この場合にはどの区分に載っている商品役務について権利申請するのかが重要です。

どの区分について権利申請するのか有効かは、経験豊富な弁理士・弁護士の意見が参考になります。
これでよい、との心証が得られたのちは、専門家にその内容をチェックしてもらえば安心です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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