商標登録で権利範囲をあいまいにすると損をする7つの理由

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商標登録の際には、権利の申請書類に商標と、その商標に使用する商品や役務(サービス)とを記載しなければならないことになっています。

この商品や役務を記載する際に、できるだけ具体的に特定しない方が有利になる、と、あなたがもし考えているとしたらとても危険です。

というのは、権利申請する願書に記載されていないことは、最終的に得られる権利範囲から漏れることになるからです。

1)生活用品、日用雑貨と記載すると特許庁の審査で落とされます

願書に記載しなければならない商品や役務の範囲は商標法で定められています。法律表記にない場合には自由に願書に商品や役務の内容を記載することができます。

ただし自由に商品や役務の内容を記載できるからといっても、記載内容が具体的でないと特許庁の審査に合格することができません。生活用品、日用雑貨、化粧小物等と記載すると、一発で不合格の通知がきます。

どの様な表記なら審査官が認めて審査に合格させてくれるのか、あらかじめ調べた上で権利の申請を行う必要があります。

私は「特許庁商標課編 類似商品・役務審査基準(発明推進協会)」という本を手元に置いて、具体的な商品や役務を特定しています。

電話帳ほどの大きさですので、大きな書店の商標コーナーで比較的簡単に見つけることができると思います。
ちなみに商品や役務の法律表記は今年の1月1日から変更になっているので、昨年2014年までの古いものを使わないように注意が必要です。

2)あいまいなまま権利申請を依頼すると業者にはめられます

商標登録の際に、指定する商品について生活雑貨や日用小物でお願いします、と業者に依頼するのはとても危険です。

仮に生活雑貨や日用小物を指定して業者に手続を依頼した後の審査の結果、「たわし」と「バケツ」だけが審査に合格できて、他のアイテムが審査に合格できなくて全滅したとします。この場合、「たわし」と「バケツ」についての商標権が業者から多額の請求書と共に送られてきます。

本当に「たわし」と「バケツ」についての商標権にお金を払ってよいのでしょうか?

「たわし」と「バケツ」についての商標権が本当に必要だったのでしょうか。

「生活雑貨や日用小物」についての商標権が必要であると確かに業者に伝えたけれども、本当は「たわし」や「バケツ」以外に、権利を確保すべき大切なものがあったのではないでしょうか。

商標権を取得すべき大切なものがあるのであれば、「生活雑貨や日用小物」と業者に伝える前にその大切なものを先に伝える必要があります。

もし「たわし」や「バケツ」以外に大切なものがあるなら、その大切なものが取得できないと意味がないことを事前に業者に伝えておくことがとても大事です。

あいまいなままで権利申請をしたのでは、要らないものだけが手元に残り、大切なものが権利範囲から漏れてしまうこともありますのでご注意を。

3)いいかげんに申請内容を書くと後でたいへんな目に会います

例えば、「カメラ」についての商標権を取らなければならなくなった、とします。実際に扱う商品は「デジタルカメラ」であった、とします。

フィルムを使用するカメラの場合は、商標法上は第9類(商標法上の区分は第1類から第45類まで45個あります)の「写真機械器具」に該当します。

ところが「写真機械器具」の中に、原則として「デジタルカメラ」は含まれないのです。何故なら、「デジタルカメラ」は商標法上は第9類の「電子通信機械器具」に該当するからです。

このため「写真機械器具」を権利申請の願書に記載して権利を得たとしても、その商標権の内容は「デジタルカメラ」を含んではいない、ということになります。

こういったワナは商標法上の中に至るところに隠されています。ワナがあることを知らなければ、商標法の世界はお花畑の中だと思って歩むのと何ら変わりません。
ワナがあることを知っていれば、お花畑の中に隠されている地雷を踏まなくて済むのです。

4)あいまいな権利申請をすると競業者に権利を食いちぎられてしまいます

「デジタルカメラ」が「写真機械器具」の権利範囲に原則含まれない、と聞いてびっくりしましたか?

日常的な常識でいえば、「デジタルカメラ」であってもカメラはカメラなんだから、「写真機械器具」の権利範囲に含まれても良いのでは、と感じる人も多いと思います。

先に「権利範囲に原則含まれない」、と説明しましたが、この「原則」というのがミソです。

ちなみにちょっと商標法を勉強した人は、第9類の「写真機械器具」と「電子通信機械器具」とは別の商品として扱われるけれど、第9類の「写真機械器具」と「デジタルカメラ」とは特別に類似するものとして扱われる(*)ということを知っているかも知れません。

*この特別に類似するものとして扱われる場合のことを、ローカルな業界用語で「備考類似」といいます。特許庁の審査基準の備考に記載されているからです。

では備考類似だから「デジタルカメラ」は「写真機械器具」の権利範囲に含まれるので安心できるか、というと、そうではありません。

例えば、「デジタルカメラ」についての商標権を取得したつもりになって、「写真機械器具」を指定して審査に合格した、とします。

これをみていたライバルが「デジタルカメラ」についての権利内容が漏れていることに気づいたとします。このライバルが「電子通信機械器具」を指定してこちらと同じ商標を出願すると、このライバルの商標登録出願が審査に合格してしまう場合があります。

備考類似を知っている人には「げげっ、」という感じでしょうが、特許庁の実務上の審査では備考類似を考慮しない場合があります。

抜けのあった権利内容を手元に取り戻すためには、異議申立、無効審判を行う必要があります。

これらの上級審で権利を取り戻すことはできるでしょう。

しかし結果的に安くはない費用を支払う必要が出てくるのです。

5)はっきり権利申請せず、ぼかした方が権利範囲が広いというのは誤解です

日常生活では立場を明らかにしない方が、将来いろいろな立場を採ることができるので有利になります。

この感覚の延長で商標登録の権利申請の記載をあいまいにすると、特許庁の審査でも、裁判所における権利侵害の判断場面でも、明確に記載されていないものは権利範囲に含まれないと判断される危険があります。

商標法上の規定では、権利申請する願書には欲しい権利内容を記載する、と定められています。ですので、権利申請する書面に記載されていないものは権利範囲に含まれない、として扱われるのです。

6)権利範囲が決められない理由はここにあります

商標登録を求める願書に記載する権利申請内容があいまいになるのには理由があります。

商標登録を希望する方の中には、

「自分が使うので他人がこちらの邪魔をしないように権利関係を明確にしておきたい」、と考える方と、

「とにかく他人にこちらの商標を使わせたくない」、と考える方の大きく二つのパターンがあります。

自分が使う商品やサービスについて商標権を取得するのが本来の姿です。

これに対して「他人にこちらの商標を使わせたくない」と考えると、最終的にはありとあらゆる分野の商品や役務についての商標権を取得する必要がでてきます。

ところが商標登録の場合は、権利範囲を広く設定すると取得にかかる費用が増大する関係になっています。

業者が儲かるので、広い権利範囲の取得を勧めるところもあるのではないでしょうか。

結局は使わない商標権のために費用を使うのはいかがなものか、と思います。

使っていない登録商標については、使っていないこと自体が権利を消滅させる理由にもなります。

一定の条件下に登録商標を使用していないことを理由として、取消審判を特許庁に請求されてしまう場合もあります。

ですので、漫然と権利範囲を広げるのは費用対効果の面で効率がよくありません。

また権利範囲を特に必要のないところまで広げて申請すると、権利を広げた分だけ他人の権利と衝突しやすくなります。

つまり特許庁で審査に合格できない理由が増えることになります。

ちなみに権利申請内容の全部が他人の権利と衝突している場合だけではなく、他人の権利と一部分が抵触している場合でも、その抵触している部分を完全に除去しないと特許庁の審査に合格することはできません。

7)ではどうすればよいのか

権利申請内容があいまいのままでは良いことは何一つありません。
あいまいなままの権利申請を防ぐために、ご自身の実際に行う予定のある業務内容を箇条書きでしっかり明確に記載していくことです。

同じ区分内にあるのであれば、権利申請内容が数多く書いてあっても書いていなくても特許庁に支払う費用は同一です。

*注)同じ区分内でも、あれもこれもと権利申請すると、審査官から、あなた本当にそんなにたくさんの範囲で商標を使用するのですか?、と確認を求められます。

しかしたくさんの事項を記載しただけの理由で審査に不合格になることはありません。記載事項が多いことが問題の場合には、審査官の指導に従えば審査に合格することができます。

自分が将来つかうアイテムについて、明確に、もれなく、箇条書きで書くことを心がければ、権利漏れ等の回避につながり、後の苦労が少なくて済みます。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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