先生助けて!拒絶理由通知が送られてきました。これって何ですか。(1)

商標登録の願書を特許庁に提出すると審査されます。審査に通過できない場合には特許庁から審査官の「拒絶理由通知」がきます。この通知は審査終了を示すものではなく、意見があるならいいなさい、という意味です。今回は実務上重要な規定の代表例である、商標法の不登録事由について、特に10号、15号、19号を中心に取り上げてみたいと思います。

先生助けて!拒絶理由通知が送られてきました。これって何ですか。(1)

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

ここで示す10号、15号および19号は、こちらが出願した商標が、他人の有名な商標と重なる関係にある場合の規定です。

既に存在している有名な商標と間違えるような商標は後から審査に合格させませんよ、という内容の規定です。

1.10号

「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」
(商標法4条第1項10号)

未登録周知商標についての規定です。

日本の商標は登録主義を採用しているため、登録要件の判断は他人の登録商標との関係を中心に審査されます。

しかし、たとえ未登録であっても一定の周知性を獲得した商標を他人が後から出願しただけで、当該他人への登録を認めてしまっては周知性を獲得したものの既得権益が侵されるだけでなく、既存の法律状態が崩れる結果となってしまいます。

そこで、一定の周知性を獲得した商標を類似する商標を含め他人が登録することを防止するために本号が設けられました。

本号で最も問題となるのは周知性の程度です。

具体的には本号によって守られる商標には日本全国における周知性が要求されるのか、または一地方程度の周知性で足りるのかです。

確かに出願を懈怠した商標を保護するのだから要件は加重すべきであり、全国的な周知性を求めるべきとの説も有力ですが、特許庁の見解としては一地方程度の周知性を獲得した場合本号の適用があるとされています。

2.15号

「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)」
(商標法4条第1項15号)

出所混同を防止する10号から14号までの総括規定です。

出所混同が実際に生じるであろう典型的な場面を想定して個別に規定したのが10号から14号です(13号は平成23年の改正により削除されておりますが。)。

これに対して、個別の規定に該当しない場合でも出所混同が生じるであろう出願を拒絶するのが本号です。

本号で問題となるのは「混同を生ずるおそれがある商標」とは何かです。

審査基準によると「その他人の業務に係る商品又は役務(以下「商品等」という。)であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合をもいう。」とされています。

例えば商標権者が多角経営を営むことで有名な大手の総合食品メーカーであるような場合に、その商標権者の社名と類似した商標を「飲食物の提供」に出願したような場合には本号に該当します。

また本号に該当するかの否かの判断には、単に形式的な事項のみならず、例えば「取引の実態」、「取り扱う商品又はサービスの関連性」、「商標が造語であるのか」や「商品またはサービスの取引者や需要者」等、具体的な事情を総合的に判断します。

なお、特許庁データベース「特許情報プラットフォーム」では「日本国周知・著名商標検索」が可能になっています。

3.19号

「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」
(商標法4条第1項19号)

未登録周知商標を不正目的で登録することを防止するための規定です。例えば、外国で周知な商標の商標権が日本に進出する計画があることを知った者が、代理店契約の締結を強要するための材料として使用するために、剽窃的に商標を登録してしまうような場合が本号に該当します。また、周知商標の希釈化(ダイリューション)や汚染化(ポリューション)を防止するために本号が適用されることもあります。

4.その他

商標法では周知商標や著名商標を他人が登録することを防止する規定を設けていますが、不正競争防止法では、一定の場合、他人の商品等表示をその商品等に使用する行為(2条1項1号)や他人の著名な商品等表示を使用する行為(2条1項2号)が不正競争に該当するとして、差し止め(3条)や損害賠償請求が認められます(4条)。

商標は不正競争防止法上の商品等表示に該当しますので、周知商標や著名商標は未登録の状態であっても一定の保護を受けられる可能性があります。

しかし、実際に訴訟の場において上記規定を根拠に他人の使用を差し止めたり損害賠償を請求するためには、立証責任を請求者側が負担しなければなりません。

つまり、未登録の状態を放置するより、いざという時のために商標登録はきっちり受けておいたほうがあとあと後悔しないで済むようです。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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