先生!一般名称が商標登録されています。

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1.まずはじめに

商標登録第2033007号の商標権者が大手スーパーを相手取り、当該スーパーが使用する商標「十二単の招福巻」が登録商標の侵害に該当するか否かが争われました。

大阪地裁は原告の主張を認める判決を下しましたが、控訴審である大阪高裁は異なる判決を下しました。

2.招福巻事件

控訴人標章の法26条1項2号(普通名称)該当性について
「招福」はもともと「福を招く」を名詞化したもので馴染みやすい語であり、これと巻き寿司を意味する「巻」(乙10,11)を結合させた「招福巻」なる語を一般人がみれば、節分の日に恵方を向いて巻き寿司を丸かぶりする風習の普及とも相まって、極めて容易に節分をはじめとする目出度い行事等に供される巻き寿司を意味すると理解し、被控訴人の本件商標が登録されていることを知らないで「招福巻」の文字を目にする需要者は、その商品は特定の業者が提供するものではなく、一般にそのような意味づけを持つ寿司が出回っているものと理解してしまう商品名ということができる。

現に、上記(3)によれば、遅くとも平成17年以降は極めて多くのスーパーマーケット等で「招福巻」の商品名が用いられていることが認められる上、同じ頃頒布されたと思料される阪急百貨店の広告チラシ(乙3の2の1)中では、被控訴人の商品(小鯛雀鮨「すし萬」招福巻)と並んで「京都・嵐山「錦味」錦の招福巻」や「「大善」穴子招福巻」が並記されていることからも、スーパーマーケット等のチラシをみて、「招福巻」と表示される巻き寿司が特定のメーカーないし販売業者の商品であると認識する需用者はいなくなるに至っていたことが窺われるというべきであるし、それより早い平成16年の時点で全国に極めて多くの店舗を展開するダイエーのチラシに「招福巻」なる名称の巻き寿司の商品広告が掲載されたことも、それ以前から「招福巻」が節分用巻き寿司の名称として一般化していたことを推認せしめるものといえる。

なお、広辞苑に「招福」の語が収録されたのは平成20年発行の第6版(乙44)からであるが、既にみたとおり、「新辞林」や「大辞林」にはそれ以前から収録されていたし、上記広辞苑への収録も、それまでの少なくとも数年間の使用実態を踏まえてのことと考えられるから、その収録の事実は平成16年当時に「招福」の語も普通名称化していたことを裏付けるものといえる。

したがって、「招福巻」は、巻き寿司の一態様を示す商品名として、遅くとも平成17年には普通名称となっていたというべきである。もっとも、「招福巻」が、本件商標の指定商品に含まれる巻き寿司についての登録商標であることが一般に周知されてきていれば格別であるが、被控訴人が警告をし始めたのはようやく平成19年になってからであり(甲21ないし22の各1・2)、本件全証拠によってもその時点までに本件商標が登録商標として周知されていたと認めるに足りず、かえって上記警告の時点までに「招福巻」の語は既に普通名称化していたものというべきである。

さらに、控訴人標章中「招福巻」の部分の使用は、前記認定に係るその書体、表示方法、表示場所等に照らし、商品名を普通に用いられる方法で表示するものと認めることができる。この点に関し、被控訴人は、控訴人標章は、商品の包装及びチラシにおいて本件商品の名称として自他識別機能を果たす態様で使用している「普通に表示される方法で表示したもの」に当たらない旨主張するが、被控訴人がどの点を捉えて自他識別機能を果たす態様での使用と主張しているのか不明であるし、控訴人標章の使用をもって専ら自他を識別するために使用されているものとまでは認められないから、この点の被控訴人の主張は採用することができない。

そうすると、控訴人標章中「招福巻」の部分は、法26条1項2号の普通名称を普通に用いられる方法で表示する商標に該当するものとして、本件商標の商標権の効力が及ばないというべきである。
大阪高裁平22.1.22(一部抜粋)

3.まとめ

商標権者は指定商品又は指定役務に登録商標を使用する権利を占有し(第25条)、商標権の効力は同一のほか類似の範囲にまで及びます(第37条)。

その一方で、普通名称などの一般的な名称を使用しても商標権の効力は及ばないとも規定しています(第26条)。この招福巻事件でも控訴人は形式的には登録商標と類似する商標を使用していると判示していますが、紙面の都合上掲載してはいません。

しかし、結局のところ「招福巻」の文字はすでに普通名称化しており、巻き寿司に使用したところで商標権を侵害しませんと結論付けています。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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