地域団体商標で、初登録された商店街「かっぱ橋道具街」

東京・台東区にある「かっぱ橋道具街」は、プロ御用達の調理道具や食器など、さまざまな品が揃う商店街です。約800メートルにわたって、ずらりとお店がひしめく光景はメディアに取り上げられることも多いため、目にしたことがあるかもしれませんね。実は、地域団体商標で商店街として初めて登録されたのは、この「かっぱ橋道具街」でした。今回は、この街と商標のかかわりについてご説明します。

かっぱ橋道具街

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

(1)「かっぱ橋道具街」の歩み〜苦難を乗り越えての発展

(1−1)大空襲から再建し、一大商店街へ

上野と浅草の間に位置する「かっぱ橋道具街」の始まりは、大正時代にさかのぼります。

この頃、江戸時代に整備された新堀川の両岸に何軒かの古道具店ができました。
新堀川は関東大震災後に暗渠化しますが、街の復興に伴うように、付近には「食」に関係する店舗が集まり始めました。

けれど、時代は戦争へと流れていき、1945年の大空襲によって道具街は全焼してしまいます。

しかし、戦争が終わると再びいくつもの店舗が集まり、街は再建されていくのです。そして、活気を取り戻していった「かっぱ橋道具街」は、やがて一大商店街へと発展していきました。

(1−2)さまざまな人が集う現在の街

現在、「かっぱ橋道具街」には、約170の店舗が軒を連ねています。

取り扱うカテゴリーは広く、調理器具や製菓器具をはじめ、厨房の設備機器や食器、店舗の看板や店員のユニフォーム、食品サンプルなど、「食」に関するものがすべて揃うといっても過言ではありません。

こだわりの品々が手軽に購入できるため、プロだけではなく、一般客の姿も多くみられます。
活気ある下町の雰囲気を感じながら買いものを楽しめるため、いまでは「お出かけスポット」としても注目されているのです。

かっぱ橋の街並み

コラム

なぜ「かっぱ」と名付けられたのでしょうか?

「かっぱ橋」の名前の由来には、現在、2つの説があるといわれています。

1)「雨合羽」説

かつて、この付近に住む俸禄の少ない武士が、内職で雨合羽をつくっていました。
これを付近の橋に干していたことから、「合羽」と名付けられたといわれています。

2)「河童」説

江戸時代に整備された新堀川は、ひんぱんに洪水になることを憂いた合羽屋喜八によって、掘割工事が行われたものです。
しかし、私財を投じて工事を始めたものの、なかなかうまく進行しません。これをみていた河童たちが、毎夜、工事を手伝ったことが由来ともいわれています。

(2)「かっぱ橋道具街」が商標登録されるまで

(2−1)自らの手で地域ブランドを守る「地域団体商標」

「かっぱ橋道具街」は、2013年に地域団体商標として登録されました。

この商標では、それまで難しかった「地名+商品内容」の登録ができるため、地元の人々が自らの手で地域ブランドを守り、育てることが可能です。

また、土地の特産品や伝統品といった商品はもちろん、温泉や商店街、川下りのようなサービスも対象となるため、幅広いジャンルで地域活性化に役立てることができます。

そして、この地域団体商標制度のなかで、小売または卸売としてサービスの提供を行う「商店街」として、 全国初の登録となったのが「かっぱ橋道具街」です。

(2−2)地域団体商標としての登録

しかし、 「かっぱ橋道具街」が地域団体商標として登録されるまでには、さまざまな苦労がありました。

まず、街の名称としても、「かっぱ橋」「カッパ橋」「合羽橋」という表記が混在して使用されている状況でした。これを「かっぱ橋道具街」として統一した上で、文字商標として登録を目指します。

しかし残念ながら、このときの登録は叶いませんでした。

地域団体商標制度の導入される前は、「地名+商品内容」の商標が登録されるケースは非常に稀だったのです。そこには、高い知名度を誇り、長年の使用が証明され、ほかと混同される可能性がないなど、さまざまな条件がありました。

そのため、「かっぱ橋道具街」もまた、全国的な著名性の証明が難しい、とされてしまいました。

(2−3)「かっぱ橋道具街」の地域団体商標について

その後、2006年に地域団体商標制度が始まります。また、翌2007年には小売等役務商標制度も開始され、個々の商品ではなく、商品の販売自体を総合的なサービスとして登録することが可能となりました。

このような背景と、 2012年に100周年を迎えるタイミングが後押しとなり、「かっぱ橋道具街」は、2011年に地域団体商標として出願されました。

このとき指定された区分は、個別の商品ではなく、「小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」にあたる第35類です。

そして、無事、2013年に地域団体商標として登録されました。
その詳細は、以下のようになります。

かっぱ橋道具街(商標登録 第5578351号)

  • 権利者:東京合羽橋商店街振興組合
  • 出願日:2011年3月24日
  • 登録日:2013年4月26日

区分は以下の通りです。

  • 第35類「東京都台東区松が谷および西浅草地区における業務用加熱調理機械器具の小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、東京都台東区松が谷および西浅草地区における鍋類・やかんの小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、東京都台東区松が谷および西浅草地区における食品見本模型の小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、東京都台東区松が谷および西浅草地区における白衣の小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、東京都台東区松が谷および西浅草地区における業務用冷凍冷蔵庫の小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」など

(2−4)「かっぱ橋道具街」の図形商標について

図形として商標登録(商標登録 第4823272号)

 
地域団体商標の登録に先立ち、意匠(デザイン)や図形などの商標は登録されていました。
その一例は、以下のようになります。

かっぱ橋・登録商標
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用

  • 権利者:東京合羽橋商店街振興組合
  • 出願日:2004年5月11日
  • 登録日:2004年12月3日

区分は以下の通りです。

  • 第35類「広告、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、建築物における来訪者の受付および案内、広告用具の貸与」など
豆知識

お店を探すときは、旗やステッカーを目印に

「かっぱ橋道具街」を歩いていると、かっぱのイラストがあしらわれた旗やステッカーがたくさん目に入ります。これは、東京合羽橋商店街振興組合によって配布されたものです。

この旗やステッカーがあるのは組合加盟店となるため、お店を選ぶときの参考にできますね。

かっぱ橋・組合旗
「かっぱ橋道具街」HPより引用

(3)インターネットを活用し、街を身近に

(3−1)さらに多くの人に親しんでもらうために

「かっぱ橋道具街」では、1996年からホームページを開設しており、100周年の記念事業の1つとして、検索機能を追加するリニューアルが行われました。
現在は、店舗名のほか、商品カテゴリーや業種、地図などから店舗を検索することができます。

また、インターネット通販を行っている店舗もあり、実際に足を運べなくとも、本格的な道具が購入することも可能です。

チェックしてみましょう

 [詳細情報/記事参考]「かっぱ橋道具街」
 http://www.furikake-gp.com

かっぱ橋・店頭陳列

(4)まとめ

「かっぱ橋道具街」では、毎年10月に商店街が一丸となって運営する「かっぱ橋道具まつり」が開催されています。このイベントも2017年で第34回を数えるほどになりました。
今回も、1週間にわたってさまざまな催しが行われ、多くの人が足を運びました。

プロの料理人も家庭の主婦も、いい道具を手に入れると、料理へのモチベーションが一気に上がりそうですね。おいしい料理は、それぞれの道具が役割を果たすことで、初めて私たちの元に届けられているのかもしれません。

そして、商標もまた、権利を保護することはもちろん、地域の活性化を支えるため、陰ながら役割を果たしているのです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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