カナダの商標法、ついに改正!

「改正する、改正する」と言われ続けたカナダの商標法が、ついに改正されることになりました。2019年6月17日が施行日です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、カナダの商標法は日本や他の国と比べて異なる点が多々ありました。そこで今回は、カナダの商標法がどのように変わるのかについてご紹介したいと思います。

カナダの商標法、ついに改正

索引

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

1.序章 カナダってどんな国?

商標法のお話に入る前に、まずは簡単なカナダのご紹介です。

(1)基本情報

カナダというとどのようなイメージをお持ちでしょうか。

「ナイアガラの滝」をはじめとする雄大な自然や、雪と氷の寒い国というイメージでしょうか。

また文学にご興味のある方ですと「赤毛のアン」の舞台として思い浮かべるかもしれませんね。

外務省のサイトから、カナダの基本情報をピックアップしてみました。

  • 面積
    998.5万平方キロメートル(ロシアに次ぐ世界第2位,日本の約27倍)
  • 人口
    約3,650万人(2017年カナダ統計局推計,日本の約4分の1)
  • 首都
    オタワ
  • 言語
    英語,フランス語が公用語
  • 宗教
    ローマン・カトリック(加国民の約半分近く)
  • 政体
    立憲君主制(イギリス型議院内閣制と連邦主義に立脚)
  • 元首
    エリザベス二世女王(但し,総督が女王の代行を務める。現総督は,ジュリー・ペイエット)
  • 在加邦人数
    70,025人(2017年10月1日現在 外務省統計資料)
  • 在日カナダ人数
    10,282人(2017年12月末時点 法務省統計資料)

外務省サイトより引用

(2)こんな登録商標があります!

特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第第396886号
  • 権利者:カナダ国
  • 出願日:2009年3月30日
  • 登録日:2011年3月11日
  • 指定商品等:
  • 第 9類「カナダ国籍を有する企業が製造した電気通信機械器具」等
    第41類「カナダに本拠地を有する大学による技芸・スポーツ又は知識の教授」等

国を挙げて、商標の観点から、自国の企業等の日本での活動を応援しているんですね。

2.改正のポイント

(1)他の国との相違点は?

(A)区分がない!

カナダの商標法で最も他の国と違っていたのは「区分の概念がない」ということでした。

例えば日本で商標「あいうえお」を「豆腐」「ウォッカ」「演劇の上演」の商標として出願する場合の願書の記載はこのようになります。



【商標登録を受けようとする商標】
あいうえお
【標準文字】
【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】
 【第29類】
  【指定商品(指定役務)】 豆腐
 【第33類】
  【指定商品(指定役務)】 ウォッカ
 【第41類】
  【指定商品(指定役務)】 演劇の上演



また商品や役務が3つしかなくても、3つの区分にまたがっているため、3区分の印紙代(出願時29,200円)がかかってしまいます。

一方、カナダの場合、単に「豆腐,ウォッカ,演劇の上演」と商品や役務の名前だけ列挙すればOKでした。

また区分がないので、印紙代も一律です。

ただ、たくさんの商品や役務を指定すると、ちょっと分かりにくいかもしれませんね。

(B)出願の基礎がいる!

カナダで商標登録する場合、単に「カナダで商標登録したいから」というだけでは足りず、「なぜカナダで商標登録を受ける必要があるのか」を示す「出願の基礎」を決めねばなりませんでした。

「出願の基礎」はいくつのかタイプがあり、「カナダ国内で使う」「カナダ国内で使う予定(意思)がある」「自国ですでに出願や登録がされている」「カナダ国内で有名になっている」のいずれかorこれらの組み合わせから選びます。

なお、この「出願の基礎」を決めねばならない国の代表といえばアメリカで、それ以外でも採用している国はありますよ。

(2)改正後はどうなるの?

改正後の注目ポイントは以下の通りです。

(Point 1)国際分類を採用!

カナダでも2019年6月17日以降は、日本と同じく、出願の際に商品や役務だけでなく、それらが入る区分の指定が必要になります。
その結果、区分数がUPすればかかる費用もUPしてしまいます。

そこで、特に区分数が多くなりそうな場合は、2019年6月17日よりも前の出願がお得です。

また、更新手続も同様に区分ごとの課金制度になりますので、ご注意ください。

(Point 2)出願時の手続が緩和!

出願時に、商標の使用をスタートした日や外国での使用や出願・登録に関する情報の提出が必要でなくなります。

(Point 3)使用宣誓書の提出も不要!

これまで出願から3年以内の提出が必要だった使用宣誓書も不要になります。

2019年6月17日時点でペンディング中の出願についても同様の扱いです。

(Point 4)分割出願OK!

これまで認められていなかった分割出願が可能になります。
なお分割出願とは、元の出願の一部をその出願日を維持したまま新たな出願とすることです。

上記の商標「あいうえお」のケースを例にすると、登録できない理由の対象が指定商品「ウォッカ」のみの場合、指定商品「ウォッカ」を分けて別の出願にすることで、問題ない部分である「豆腐」「演劇の上演」は先に登録することができ、問題ある部分「ウォッカ」については、元の出願日を維持したまま別途審査を受けることができます。

(Point 5)新しいタイプの商標の登録もOK!

2015年4月1日に日本でも導入済の、いわゆる「新しいタイプの商標」も商標法の保護対象に仲間入りします。

日本でも認められているタイプ(「音」「色彩」「動き」「ホログラム」「位置」)の他に、「香り」や「味」「触覚」も認められます。

(Point 6)存続期間が10年に!

現在のカナダの商標法では、商標権の効力は登録日から15年間効力が続きますが、今後は10年に短縮されてしまいます。

3.まとめ

カナダは、すでに加盟済みの意匠の条約「ハーグ協定」に加え、今後、商標の条約「マドリッド協定議定書」(マドリットプロトコル、通称マドプロ)にも加盟する予定です。

今回の商標法改正とマドプロ加盟によって、カナダでの商標登録までのハードルが少し下がったのではないでしょうか。
しかし良いことばかりではないのです。

今回の商標法改正の目玉でもある「使用についての要件の緩和」により、他人の商標を先に出願して横取りするケースが増えると考えられます。

そこで、カナダで事業展開をお考えの場合には早めの出願をお勧めします。

それではまた。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子
03-6667-0247

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