先生!先に商標登録されてました。

商標権は独占権ですので、先に他人が登録を受けてしまった場合には、原則として使用することが出来なくなります。商標権者との話し合いで解決できれば良いのですが、最悪の場合には訴訟にまで発展します。訴えられた側は先使用権の主張が可能であり、主張が認められれば、商標権の行使をはねのけることが出来ます。今回はそんな先使用権の成否が争われた裁判をテーマに取り上げてみたいと思います。

先生!先に商標登録されてました。

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

1.先使用による商標の使用をする権利

商標権者は指定商品またはサービスに登録された商標を独占的に使用することが認められ、権利を侵害する者に対しては差止請求や、損害賠償請求が認められます。

また、日本の商標制度は登録主義を採用しているため、同一または類似する商品またはサービスに同一または類似する商標を使用するものが2以上現れた場合には、先に登録を受けたものがインセンティブを握ります。

しかし、登録主義の原則を厳格に貫いた場合、法制度を知らずに未登録商標を継続して使用していたものの築き上げた業務上の信用が損なわれ、法目的にも反する可能性があります。

そこで、商標法は未登録の商標であっても継続的に使用した結果として一定程度の周知性を獲得した場合には、その後も周知性を獲得した商標の使用を認めています。

商標法では次のように規定されています。

他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
商標法

2.ゼルダ事件

アパレルの分野で先使用権が成立しているか否かが争われた事件です。

三1 商標法三二条一項所定の先使用権の制度の趣旨は、職別性を備えるに至った商標の先使用者による使用状態の保護という点にあり、しかも、その適用は、使用に係る商標が登録商標出願前に使用していたと同一の構成であり、かつこれが使用される商品も同一である場合に限られるのに対し、登録商標権者又は専用使用権者の指定商品全般についての独占的使用権は右の限度で制限されるにすぎない。そして、両商標の併存状態を認めることにより、登録商標権者、その専用使用権者の受ける不利益とこれを認めないことによる先使用者の不利益を対比すれば、後者の場合にあっては、先使用者は全く商標を使用することを得ないのであるから、後者の不利益が前者に比し大きいものと推認される。かような事実に鑑みれば、同項所定の周知性、すなわち「需要者間に広く認識され」との要件は、同一文言により登録障害事由として規定されている同法四条一項一〇号と同一に解釈する必要はなく、その要件は右の登録障害事由に比し緩やかに解し、取引の実情に応じ、具体的に判断するのが相当というべきである。

五 したがって、被控訴人は、商標法三二条一項の規定により、婦人服について、被控訴人標章の使用をする権利を有するものということができるから、被控訴人が婦人服に被控訴人標章を使用する行為は、本件商標権の侵害を構成しない。

東京高裁平5.7.22(一部抜粋)

ここでは「広く認識された」の範囲を裁判所が示した判決として注目を浴びました。

また、被控訴人が一時商標の使用を中止した時期があり「継続して」の要件を満たすかが問題となったのですが、これについても裁判所は控訴人からの警告によるものであり「原告(被控訴人)は、本件紛争が解決したときには、被服、布製身回品及び寝具類に原告標章を使用する意思を有しているのである」として継続的使用の要件も満たしていると判断しました。

3.まとめ

ゼルダ事件では被控訴人には先使用権の成立が認められ、商標権侵害の成立は否定されました。

しかし、日本の商標法制度は登録主義を基調に設計されています。つまり、先使用権は商標法制度における例外的な扱いであって、認められないことの方が多いようです。また、先使用権の存在を認めさせるための膨大な時間と対応費用がかかります。
さらに、万が一、先使用の存在の立証に失敗した場合、商標権侵害が成立してしまします。

今後使用する商標、または現在使用中の商標は安全な事業運営を考慮するのならば、出願して登録を受けておくことをお勧めいたします。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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