索 引
(1)商標登録の代行とは?
一般の方が使う「代行」の意味
自分以外の第3者に、商標登録の手続きを広くお願いする場合を指しています。
法律上の「代行」の意味
類作成のみ第3者が行い、特許庁への申請は権利者本人が行う場合を「代行」と言います。
書類作成に留まらず特許庁へ申請まで、本人に成り代わって第3者が行う場合は「代理」と言います。
なぜこのように言葉が分かれるかと言えば、代行は専門家以外が行う場合がありますが、代理ができるのは弁理士に、法律上で制限されているからです。
このページでは一般の方に合わせ、代行とは商標登録の手続きを申請まで含めて、第3者に委託する場合としてご説明します。
(2)なぜ法律は弁理士に、制限しているのか?
法律上の制限がなければ、弁理士以外の、行政書士さんや司法書士さんも、特許庁に申請・交渉できるようになります。自由競争が広がり、依頼費も下がりますから、本来はそうあるべきです。
それではなぜ、法律は弁理士に制限しているのでしょうか?
それは商標を取得しようとする、皆さん依頼者を保護するためです。どういうことかと言えば、申請された商標は特許庁の審査官が審査します。審査官は商標制度の隅々まで知り尽くしたプロです。
申請された商標が許可されれば、何の問題もありませんが、審査官がNOの判断をした時に、専門知識を持たない人では反論が出来ません。日本の商標は170万件以上もあり、毎年10万件が新たに申請されています。
専門知識のない方が申請した場合、必ず既存の商標とバッティングする可能性が高いです。ですので十分な事前調査を行うことで、特許庁の審査官が許可するような商標を作り、仮にNOの判断が出ても反論し、審査官を説得できる専門性が必要になるわけです。
このように商標登録を代行するメリットは、一言で言えば、高い専門性を持つ人にお願いすることで、商標を確実に取得できる点にあります。
それではこの高い専門性とは、どのような点を言うのでしょうか? 代行のメリットとして、7つほど説明します。
商標登録代行のメリット
● 代行のメリット1. 商標として認められる言葉か否かの判断
一般に広く使われている名詞は、商標として認められません。例えば「タクシー」です。運送業の方が「タクシー」で申請しても審査には合格しません。
ところがファッション関係の方なら「タクシー」は認められる可能性があります。このように、どこまでなら商標として認められるか、微妙な領域を判断した上で申請してくれるのが、代行の大きなメリットです。
● メリット2. 類似商標を回避する判断
「スターワーズ」という言葉を商標申請しようとした場合、「スターウォーズ」との類似性が問題になります。商標における類似性を、どのように見るべきか、正確な判断を下すことが出来ます。
● メリット3. 商標の効力を最大にする判断
申請の仕方によって、商標の効力は異なります。仮に「飲食店」のビジネス区分で商標を取得しても、「持ち帰り」のビジネス区分に申請しなければ、「持ち帰り」ビジネスで商標は効力を持ちません。
専門家に依頼することで、ビジネスの実情に応じた商標を取得することができます。
● メリット4. 審査結果を早める方法の選択
通常の場合、商標の審査には6か月ほどかかりますが、早期審査が認められると審査期間は2か月ほどになります。このように早期審査制度は、非常に魅力があるのですが、全ての方に早期審査が認められるわけではありません。
専門家に代行することで、早期審査が使えるかどうか、適切に判断することができます。
● メリット5. 許可を得やすい出願書類の作成
出願書類の作成は、やり方さえ分かれば、誰でも行うことが出来ます。ただ半角文字は禁止で英数字も全て全角にする、余計な項目は書き込まない等、細かいルールもあります。
間違った形で申請すると再度申請し直すため、手間もかかります。この意味で専門家に代行させた方が、楽といえるでしょう。
なお出願書類の作成方法は、細かいルールも含めて説明していますので、下記をご参照ください。
● メリット6. 拒絶された場合の反論
特許庁の審査官が拒絶した場合、反論をすることが出来ます。商標は非常に多くの出願があるため、判断がグレーゾーンに入ることも多いです。仮に審査官が拒絶をしても、適切な反論をすることで、商標を認めてもらうことが出来ます。
● メリット7. 他者からの異議申し立て時の対処
商標を取得しても、その後他者から異議の申し立てを受ける場合があります。その商標は、当社商標と類似するので、認められないという異議です。このような場合でも、専門家に代行させていれば、正しく反論し、商標を守ることができます。
以上7つほど、メリットを説明しましたが、もちろん代行することでのデメリットもあります。3つほど、ご説明しましょう。
商標登録代行のデメリット
● デメリット1. 費用
代行してもらうのであれば、まず手数料がかかります。手数料については、特に基準がないため、各弁理士によって費用はかなり差があります。一般的にいえば、ネット上に費用を明示している事務所は、相場より割安な費用であることが多いです。
● デメリット2. 専門分野かどうか、分からない弁理士もいる
弁理士も、それぞれ得意な分野があります。商標ではなく特許に強い弁理士もいれば、個人客の多い弁理士、法人相手の弁理士など、まちまちです。地元の弁理士だからといって、商標を得意とするわけではありません。
また商標分野でみても、飲食店に強い弁理士もいれば、化粧品に強い弁理士もいます。それぞれ得意分野を持っているので、どの分野に強いのか、特に実績をホームページで確認するのが、良いと思います。
● デメリット3. 必ず登録されるとは限らない
商標が認められるかどうかは、最終的には特許庁の判断です。専門家に代行してもらったからと言って、100%登録されるとは限りません。制度上いかんともしがたい部分ですが、1つのデメリットになるかも知れません。
(3)商標登録の代行費用
商標登録の代行費用については、特許庁に支払う印紙代についてはどの特許事務所でも同じです。それ以外の特許事務所手数料は、特許事務所ごとに異なります。
商標登録の代行費用の一例として、ファーイースト国際特許事務所の場合の費用例を示します。
5年登録分の費用です。また事務所手数料には請求時に適用される消費税が加算されます。
商標登録費用料金の一覧表(5年分:出願と登録分合計)
区分数 | 調査料 | 出願時特許庁印紙代 | 出願時手数料 | 登録時特許庁印紙代 | 登録時手数料 | 総計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 無料 | 12,000円 | 30,000円 | 16,400円 | 33,000円 | 91,400円 |
2 | 無料 | 20,600円 | 50,000円 | 32,800円 | 53,000円 | 156,400円 |
3 | 無料 | 29,200円 | 60,000円 | 49,200円 | 63,000円 | 201,400円 |
4 | 無料 | 37,800円 | 70,000円 | 65,600円 | 73,000円 | 246,400円 |
5 | 無料 | 46,400円 | 80,000円 | 82,000円 | 83,000円 | 291,400円 |
商標登録費用料金の一覧表(10年分:出願と登録分合計)
次にファーイースト国際特許事務所の10年分の商標登録費用料金の一覧表を示します。
10年登録分の費用です。また事務所手数料には請求時に適用される消費税が加算されます。
区分数 | 調査料 | 出願時特許庁印紙代 | 出願時手数料 | 登録時特許庁印紙代 | 登録時手数料 | 総計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 無料 | 12,000円 | 30,000円 | 28,200円 | 33,000円 | 103,200円 |
2 | 無料 | 20,600円 | 50,000円 | 56,400円 | 53,000円 | 180,000円 |
3 | 無料 | 29,200円 | 60,000円 | 84,600円 | 63,000円 | 236,800円 |
4 | 無料 | 37,800円 | 70,000円 | 112,800円 | 73,000円 | 293,600円 |
5 | 無料 | 46,400円 | 80,000円 | 141,000円 | 83,000円 | 350,400円 |
(4)まとめ
以上、商標登録を代行してもらうメリットを7つ、デメリットを3つご説明しました。
商標登録の代行を例えて言えば、山岳ガイドをつけるようなものだと、思ってください。山岳ガイドさんは、山の癖や難所を知っています。だから危機が起きても、適切に対応することが出来ます。
商標登録を専門家に代行させることも、同じです。初めての方では分からない難所を知っているので、柔軟に適切な対応ができると、ご理解いただければ、分かりやすいのではないでしょうか。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247