歌手名の商標登録に落とし穴あり!〜歌手名は「目印」or「品質表示」?〜

国民的人気グループ「嵐」が、2020年12月いっぱいでグループとしての活動を休止すると発表し話題になっています。今回は、歌手名と商標との関係についてご紹介したいと思います。

歌手名の商標登録に落とし穴あり!〜歌手名は「目印」or「品質表示」?〜

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

1.「嵐」は登録商標です。

「嵐」に関する商標は2件登録されています。

アラシ

  • 商標登録第4543500号
  • 権利者:株式会社ジャニーズ事務所
  • 出願日:2000年10月27日
  • 登録日:2002年2月15日
  • 指定商品:
    第 3類「香料類,化粧品」
    第14類「身飾品,宝石及びその模造品,キーホルダー」
    第20類「クッション,うちわ,せんす」
    第24類「布製身の回り品,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」
    第25類「被服」
    第26類「テープ,リボン,頭飾品」


  • 商標登録第5449902号
  • 権利者:株式会社ジャニーズ事務所
  • 出願日:2009年9月30日
  • 登録日:2011年11月11日
  • 指定役務:
    第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,インターネットによる映画の上映・演芸の上演・演劇の上演又は音楽の演奏に関する情報の提供,映画の上映・演芸の上演・演劇の上演又は音楽の演奏に関する情報の提供,ビデオ映画の上映に関する情報の提供,録音又は録画済み記憶媒体の原盤の制作,映画の上映・演芸の上演・演劇の演出又は上演・音楽の演奏の情報の提供」

さて、ここでこれら2件の権利範囲(指定商品等)にご注目。

彼らは歌手(音楽グループ名)でもありますが、どちらにも「録音済みCD」が見当たりません。

「さては出願するときに書き忘れたか?」と思われるかもしれませんが、そう単純なお話でもないのです。

2.歌手名の商標登録、ここに注意!

(1)日本では歌手名=品質表示

日本の商標の審査では、歌手名の商標は以下のように取り扱われます。

五、第3条第1項第3号(商品の産地、販売地、品質その他の特徴等の表示又は役
務の提供の場所、質その他の特徴等の表示)
3.商品の「品質」、役務の「質」について
(2) 人名等の場合
商標が、人名等を表示する場合については、例えば次のとおりとする。
(ア) 商品「録音済みの磁気テープ」、「録音済みのコンパクトディスク」、「レコード」について、商標が、需要者に歌手名又は音楽グループ名として広く認識されている場合には、その商品の「品質」を表示するものと判断する。
商標審査基準(改訂第14版)より引用

審査官が「歌手名」であると認識するかどうかが登録への道の分かれ目です。

つまり、有名であればあるほど、「録音済みCD」に付された歌手名はそのCDの内容をあらわす「品質表示」になるというのが、日本の特許庁の考えです。

(2)「LADY GAGA」事件

この審査基準に沿った判決が出されています。それが「LADY GAGA」事件です。

平成25年12月17日判決言渡
平成25年(行ケ)第10158号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成25年10月17日

レディー・ガガのマネージメントをしている会社が商標「LADY GAGA」を出願したところ、登録NGになった(拒絶査定)のが事の発端です。

その出願の内容はこちら。

LADY GAGA

  • 商願2011-21592(商願2010-28913の分割)
  • 出願人:エイト マイ ハート インコーポレイテッド
  • 出願日:2010年4月12日
  • 指定商品:
    第 9類「レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」

この審査結果を不服として出願人サイドは審判を請求しましたがやはり認められず、さらにこの審決を取り消してもらうべく提起した訴訟がこの「LADY GAGA」事件なのです。

裁判において出願人サイドは、

  • 本願商標の使い方を限定して審査している。
  • 「歌手名・音楽バンド名」を商標として登録しても特に不都合はない。
  • 将来、レーベルの名前を「LADY GAGA,Inc」に変更する可能性もあるのに、それを無視し現在の使用事実だけで判断すべきではない。
  • 「LADY GAGA」が付されたレコード等を見たときに、それが「レディー・ガガに何らかの関連がある」とは思うかもしれないが、必ず商品の品質を表すと思うわけではない。
  • この登録を認めないと、第三者が自由に本願商標を使えてしまうので、レディー・ガガのみならず購入する側の損害にもなる。
  • 過去に有名な歌手名・音楽バンド名が商標登録された事例がある。
  • レコード等を購入するときの目印は「歌手名・音楽バンド名」(つまり商標として働いている)である。
  • といった主張をしました。

しかし、裁判所の判断は特許庁とほぼ同じく、レコード等については「著名な歌手名=商品の品質」として、出願人サイドの言い分はほぼ一蹴されてしまいました。

なお、商標「LADY GAGA」ですが、これらの商品以外では登録が見つかります。

LADY GAGA

  • 商標登録第5405058号
  • 権利者:エイト マイ ハート インコーポレイテッド
  • 出願日:2010年4月12日
  • 登録日:2011年4月8日
  • 指定商品等:
    第 3類「せっけん類」等
    第 9類「インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル」等
    第14類「キーホルダー」等
    第16類「印刷物」等
    第18類「かばん類」等
    第25類「被服」等
    第35類「ファンクラブの運営・管理」
    第41類「インターネットによる音楽及び音楽をベースとした娯楽を特集した映像及びそれに伴う音声の提供」等

LADY GAGA

  • 商標登録第5577932号
  • 権利者:エイト マイ ハート インコーポレイテッド
  • 出願日:2012年10月17日
  • 登録日:2013年4月26日
  • 指定商品:
    第28類「遊園地用機械器具,愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,室内ゲーム用具,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,パチンコ器具並びにその部品及び附属品,パチンコ式スロットマシン,ビリヤード用具,運動用具」

3.まとめ

特許庁や裁判所の言い分にも一理あります。

しかし、保護する必要性が高いはずの有名な歌手や音楽グループほど、自分たちの名前が「録音済みCD」の商標としては登録できないというのは腑に落ちないと感じられる方もいらっしゃるでしょう。

その一方で海外に目を向けてみると、アメリカや中国等、歌手名が「録音済みCD」の商標として登録OKな国もあります。

なお、弁理士会でもこの審査基準を改訂してもらうよう、特許庁に働きかけています。

今後この基準が変わるのか維持されるのか、注目です。

それではまた。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子
03-6667-0247

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