イッセイミヤケ社のデザイン訴訟の件でフジテレビ「Live News it!」で解説

株式会社イッセイミヤケの発表によると、バルコス社が販売するバッグのデザインが、イッセイミヤケ側の販売するデザインに類似するとして、東京地裁に製造販売の差止仮処分申請を行ったとのことです。そもそも何の法律が適用されるのか、かばんの権利はどのように守られるのかについて、フジテレビ「Live News it!」で解説しました。

イッセイミヤケ社のデ゙ザイン訴訟提起の件でフジテレビ「Live News it!」で゙解説

ファーイースト国際特許事務所の弁理士・弁護士

(1)バッグやかばんを守る法律とは?

バッグやかばんを守る法律は大きく三つある

日常生活で必要不可欠なバッグやかばんも法律により守られます。バッグ等を守る法律は大きく三つありますが、これらの法律について最初に簡単に説明します。

かばんに関するアイデアは特許・実用新案法で守られる

かばんやバッグに、これまでにない独自の機能を発明した場合には、その発明は特許庁の審査に合格できれば特許権や実用新案権で保護されます。

ただし特許権を取得する前提として、そのかばんの機能を決定付ける発明が未だ知られていないこと、すでにある技術から簡単に思いつくことができないこと等が要求されます。

このため販売してしまったり、インターネットなどで公開してしまった後では、原則として特許権が得られなくなります。

かばんに関するデザインは意匠法で守られる

かばんやバッグに、これまでにない新規のデザインを施した場合には、そのデザインは、特許庁の審査に合格できれば意匠権で保護されます。

ただし、意匠権も特許権の場合と同様で、そのデザインが発表前であり、簡単に思いつくことができないものであることも要求されます。すでに売ってしまっている場合には原則として意匠権を得ることができなくなります。

有名なかばんは不正競争防止法で守られる

かばんが有名であれば、その有名なかばんと消費者が間違ってしまうようなかばんの販売は、不正競争法により制限されます。

ただし不正競争防止法には、保護される商品が有名であること、需要者が偽物と間違ってしまうほど似ている等の適用条件があります。

(2)訴訟対象のかばんのデザインは?

裁判を起こした側、つまり原告側はイッセイミヤケ社です。イッセイミヤケ社のホームページより、かばんのデザインを引用します。

図1 原告イッセイミヤケ社側のかばんのデザイン

原告イッセイミヤケ社側のカバンのデザイン
イッセイミヤケ社ホームページ
https://www.baobaoisseymiyake.com/ より引用

一方裁判を起こされた側、つまり被告側はバルコス社です。バルコス社のホームページより、同じくかばんのデザインを引用します。

図2 被告バルコス社側のかばんのデザイン

被告バルコス側のカバンのデザイン
バルコス社ホームページ
https://shopbarcos.jp/fs/barcos/c/hanaa-fu より引用

どこまで似ていれば不正競争防止法違反といえるのか

不正競争防止法違反に問われるかどうかの基準として、同じものか、似ているものであることが要求されます。

図1と図2に表示される商品同士が同じか似ているかどうかは、下記の三つの要素から判断されます。

外観:商品の見た目

それぞれの商品の外観が一致していれば、対比する商品同士は同一か似ていると判断されます。

称呼:商品の読み方

商品にロゴ等の商標が表示されている場合には、その商標の読み方も判断材料になります。今回は積極的にかばんの読み方が表示されていないので重要な判断要素ではありません。

観念:商品の意味

商品が明らかに何らかの意味を表示している、とか、商品に特定の意味を持つマーク等の商標が表示されている場合には、その商標の意味も判断材料になります。今回は、それぞれのかばんには特別な意味は表示されていませんので、やはり重要な判断要素にはなりません。

どこまで有名であれば不正競争防止法違反といえるのか

不正競争防止法には、訴える側の商品が有名であることが条件になっています。どの程度有名であれば法律の保護を受けられるかは、商品の種類や購入する顧客層の違い等に大きく影響を受けます。

例えば、町のスーパーに設置してある一般的な店内用かいものカゴは、日本全国に数十万、数百万単位であるでしょうが、ありふれたものであるため、特定の個人が権利を主張することができません。特定の個人に帰属して特定の個人だけが法的保護を受けられるものではなく、一般的な店内用かいものカゴのデザインは逆に誰もが自由に使うことのできる、みんなのものと考えることができるからです。

逆に総販売数は多くなくても、バーキンのような、ブランドに通じている人であれば知っているかばんは保護の対象になってきます。

裁判では、宣伝広告費、実際の販売数、特に同様な商品と比較してどれだけ突出して販売されているか等の情報が証拠とともに判断されます。

このため、単に販売した実績がある、という程度では、不正競争防止法による保護を受けることができません。

誰が不正競争防止法違反を判断するのか

判断するのは裁判官です。ただし、商品が有名であるかどうか、商品同士が似ているかどうかについて、裁判官の個人的な主観的な判断で決めるのではありません。

被告・原告の主張立証点を証拠とともに吟味した上で、裁判官が、「一般消費者が間違えてしまうかどうか」を基準にして、頭の中で考えて結論をだします。

(3)専門家は今回の結論をどう見るか

今回適用が問題になっているのは不正競争防止法です。デザインを保護する意匠法ではありません。

あくまで原告商品が有名であり、原告商品と被告商品が消費者を基準として紛らわしいといえるかどうかが主な争点になります。

このためデザインの一部が一致しているだけでは足りず、かばん全体としてこれは間違って購入しても仕方ない。そう言えるほど似ているか、という点が争われます。

イッセイミヤケ側の商品には特徴的な格子柄があります。この格子柄デザインに権利があって、格子柄をかばんに使うと権利侵害になる、と考えるのは正確ではありません。

格子柄デザインは一つの判断要素に過ぎず、種々の判断要素を総合した結果、全体として似ているのかどうかという点が問題になるのです。

イッセイミヤケ側の格子柄は独創的

イッセイミヤケ側の商品の格子柄は気品があり、格子柄に沿ってカバンが折れた際に光の当たり具合が部分部分で変化するため、特徴あるデザインとなっています。こういった商品として目を引く点が一致しているところをみれば権利侵害になる、という考え方もでてきます。

バルコス側の格子柄はシンプル

一方、被告側のバルコス商品に見られる格子柄は、どちらかというとシンプルです。イッセイミヤケ側商品に見られるような洗練された高貴なテイストは感じられません。

イッセイミヤケ側の商品には高級感が感じられるのに対し、バルコス側の商品はシンプルな構成で、一般大衆向け商品的なテイストが感じられます。

こういった観点から、両者の商品が似ているとはいえないのではないか、と考える専門家もでてきそうです。

(4)まとめ

今回の実務の事例は、教科書に出てくるような白黒はっきり判断できる事例ではなく、専門家でも意見が分かれる事案だと思われます。

実務上は裁判を提起しても両者双方が和解して、最終判決まで至らない事例が多いです。裁判を続けると訴訟費用がかさむ上に、最終解決に至るまで時間もかかるからです。

今回の私のコメントは、2019年6月14日のフジテレビ「Live News it!」で放映されました。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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