コメダ珈琲店舗外観訴訟の解説でテレ朝モーニングショーに生出演

コメダ珈琲が店舗外観のそっくりなマサキ珈琲を訴えていた裁判で、東京地裁はマサキ珈琲を運営するミノスケ社に対する店舗使用差止の仮処分決定を下しました。今回の東京地裁の決定は、これまで認められていなかったトレードドレスと呼ばれる営業表示としての店舗外観の判断に踏み込んだもので画期的な判決といえます。先行他社のビジネス形態をそっくりマネする小判鮫商法に対する判決について、テレビ朝日のモーニングショーに生出演、解説しました。

(1)コメダ珈琲の店舗外観がそっくり

(1-1) マサキ珈琲の店舗外観の無断使用はなぜ認められないのか

コメダ珈琲は、チェーン店を含めて年間8000万人近くが利用する有名な珈琲店です。このコメダ珈琲の店舗外観にそっくりな店舗を使って珈琲の提供業務を行っていたマサキ珈琲(運営はミノスケ社)に対してコメダ珈琲側は店舗外観の使用差止を東京地裁に請求していました。

この訴えに対して東京地裁は平成28年12月19日、コメダ珈琲側の主張を認め、マサキ珈琲側に店舗外観の使用差止の仮処分決定を下しました。

米国では店舗外観を保護するトレードドレス制度が普及しています。アップル社の店舗外観も一種のトレードドレスとして保護されています。

これに対して日本でも広く店舗外観や店舗のドレスアップをトレードドレスとして保護できるかどうか検討されましたが、平成27年4月改正の商標法での導入が見送られた経緯があります。

これまで不正競争防止法等で店舗外観を一種の営業表示ととらえて、商標のマークやエンブレムと同様に保護を求める裁判が請求されてきましたが、店舗外観をトレードドレスとして保護を認めた判決はなかったと私は認識しています。

これに対し、今回の東京地裁では店舗外観を不正競争防止法に定める営業表示の一種として認めたことになります。これまで認められなかったトレードドレスに対する保護が一歩前進した、画期的な判断です。

コメダ珈琲とマサキ珈琲の店舗外観の比較

コメダ珈琲の発表資料から、コメダ珈琲とマサキ珈琲の店舗外観を比較します。

平成28年12月27日付け発表コメダホールディンクス社による「仮処分命令の発令に関するお知らせ」より引用

看板の「コメダ珈琲店」との表記と「マサキ珈琲」との表記を隠すと、関係者を除き、両者を的確に区別できる人はいないのではないか、と感じるレベルで似ています。

ただ、今回の東京地裁の判決内容は、店舗外観のデザインに関する権利があって、このデザインにそっくりだから店舗を使ってはだめ、という内容ではない、という点がポイントです。

意匠法により保護されるデザインとか、著作権にいう創作物として保護されるデザインが問題になったわけではありません。

店舗外観が、不正競争防止法にいう”商品等表示”として保護された、ということです。

なお”商品等表示”では何のことかさらに分かりにくくなるので、ここでは便宜上”商品等表示”とは営業に使う表示、つまり営業表示のこととご理解ください。以降は一般の方が理解しやすいように店舗外観等のトレードドレスを”営業表示”と表します。

(2)トレードドレスとは何?

(2-1) トレードドレスとは

東京オリンピックのエンブレムマーク、有名企業の商標ロゴマーク等は業務を表示するものとか営業を表示するものとして、商標法や不正競争防止法により保護されます。

これに対して、店舗にならべる商品とか役務に使用する物をドレスアップすることにより、営業表示と同じ機能を発揮できるケースがあります。

例えば、アップルコンピュータの店舗に入ると、商品陳列の形態等からアップルコンピュータの店と分かりますし、ユニクロの店舗に入れば、独特の商品陳列により、ユニクロの店と分かります。

このような商品とか役務に使用する物の陳列に工夫を凝らしたり、店の外装とか内装とかを工夫してドレスアップすることにより特徴付けて、エンブレムマークとか商標ロゴマーク等と同様にどこの店か分かる機能を有するものをトレードドレスといいます。

店舗外観などのトレードドレスは米国においては保護されていますが、日本ではトレードドレスの保護導入は見送られた経緯があります。

トレードドレスの基本は、建物のデザインを保護対象として考えるのではなく、店舗外観も広くトレードドレスに含まれるものとして、「どこの店舗か分かる」ほど有名になった営業表示を保護対象として扱う点にあります。

(3)どこまで似ていると法律違反になるのか

(3-1) 単なる外観の部分一致ではなく「どこの店舗か分かる」点が重要

意匠法により保護されるデザインとか、著作権にいう創作物として保護されるデザインが問題になったのであれば、建築デザインの一致不一致とか、建築デザインがコピーされたかが争点になります。

これに対して不正競争防止法にいう営業表示の場合は、

  • マサキ珈琲がコメダ珈琲の有名な店舗外観を使って、利用者に混同を生じさせたかどうか
  • マサキ珈琲が、ものすごく有名なコメダ珈琲の店舗外観を使ったかどうか

との点が争点になります。

店舗の外側だけではなく、内側も検討対象

不正競争防止法上、争われる店舗外観は、店舗の一部の外観の一致不一致ではなくて、「店舗外装、店内構造および内装」の全てが検討対象になります(コメダホールディンクス社による「仮処分命令の発令に関するお知らせ」より)。

つまり建物の外部デザインだけではなく、建物の内部まで踏み込んで判断されます。

今までトレードドレスを認めた判決が日本でなされなかった理由として、建物の外部構造に加えて内部構造まで全て一致している事例が少なかったから、というのが私の読みです。

今回、東京地裁で店舗外観の使用差止の仮処分決定が出たということは、店舗の外観どころか、内装まで一致していたということになります。

そうでなければこれまでの判例の流れからして、店舗外観の使用差止の仮処分決定がでることはないと予測できるからです。

店舗の外側だけではなく、内側も検討対象になるので、単に外側の一部が一致しているというだけでは差止請求は認められないです。

このため、偶然たまたま窓の部分のみが一致している店舗があった、とか、入口の部分のみが一致している店舗があった、というだけでは差止請求は認められないです。

店舗のデザインだけではなく、コメダ珈琲が有名かどうかも検討対象

また店舗が相互に似ているかどうかの検討以外に、コメダ珈琲がどの程度有名かどうかも争点になります。有名になれば、法律上保護してもよいと考えられる価値が生じていると判断されるからです。

有名かどうかは、一般需要者からみて「どこの店舗か分かる」かどうかに依存します。みれば分かる点がポイントになります。

コメダ珈琲の場合は、系列店も含めて年間にのべ8000万人が使用しているので、コメダ珈琲が有名であることは全く問題ないです。

逆にいえば、鳴かず飛ばずの店の場合は、たまたま同じような店舗があったとしても、訴えが認められる可能性はほとんどないことになります。鳴かず飛ばずの店では有名とはいえないからです。

訴えた先の方が有名であれば、逆に訴えた側が返り討ちにより差止請求を受ける可能性すら残ります。

(4)メニューの差止はなぜ認められなかったのか?

(4-1) メニューの差止が認められなかった理由

今回の東京地裁の決定では、マサキ珈琲の店舗使用は認められませんでしたが、メニューまでは使用禁止にはなりませんでした(平成28年12月28日付け朝日新聞朝刊の報道内容より)。

店舗外観を見れば、それがコメダ珈琲だと分かるほど有名なのは異論ありません。

けれどもメニューに載っている料理については、料理単品を見て、それがコメダ珈琲のものと理解するほど有名であるかについては裁判所は疑問がある、と判断したことになります。

この東京地裁の判断については異論のある人も多いと思います。

ただコメダ珈琲のメニューについては、コメダ珈琲の店舗で食べるからコメダ珈琲のメニューであると理解できるのであって、メニュー単品を取り出して、他のケーキ店などで販売された場合、それがコメダ珈琲のものと認識できる域には達していないと判断された、ということです。

そもそも料理メニューについては、例えばパン生地に生クリームやソフトクリームを多く乗せた料理は、見た目は誰が作っても同じような料理になります。

このような料理は、コメダ珈琲のみが独占できる料理というよりも、むしろ「誰もが自由に作ることのできる料理」ということができます。パン生地に生クリームやソフトクリームを乗せるな、と言われたとしたら世界中の料理人が驚くと思います。

誰もが自由に作ることのできる料理であれば、模倣したかどうかが問題になることはありません。

土地にも私有地と公有地があり、公園などの公有地はみんなが基本的に自由に使うことができます。これと同じです。

(5)パロディなら認められたか?

残念ながら、パロディーだから自由に使ってよい、とかの、パロディーを直接認めた法律上の条項や、判例、判決例は存在しません。

あくまで法律の規定に該当するのかどうかが厳密に判断されます。

ただし、権利者側がパロディーをする側の行為を笑って許すのであれば、特段訴訟等の問題は生じません。

パロディー製品の存在により、逆に本家本元の製品が売れるなど、持ちつ持たれつの関係になるケースもあるからです。

一方パロディーだから大丈夫、と油断していると商標法違反、不正競争防止法違反などで検挙される可能性もあります。

(6)まとめ

近年飲食業界では小判鮫商法がニュースで取り上げられることがあります。例えば居酒屋チェーン店であったり、唐揚げチェーン店であったり先行同業者と同じような店舗により業務を展開しています。

有名チェーン店に似せた店作りなら間違って入店するお客さまにより儲かりますし、マスコミに取り上げられたら取り上げられたなりに宣伝広告にもなります。

今回の判決はこのような小判鮫商法にくさびを撃ち込むものです。

差止請求により店舗を使えなくなると、利幅の薄い飲食業の業界では完全に赤字になります。

トレードドレスに関して訴えが初めて認められるなど、安易なただ乗りに対して今後はこれまで以上に厳しい流れになっていくものと私は予測しています。

(追記)今回のコメダ珈琲の東京地裁の訴訟は、双方和解により決着したため、残念ながらトレードドレスの裁判所判断は確定することなく終了することになりました(2017年7月6日付け産経WESTの記事より。)。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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