日経新聞に五輪記念品偽物流通問題でコメント掲載

無料商標調査 商標登録革命

(1)公式グッズには偽物を見分ける工夫があるが

東京五輪関連グッズが狙われる

4年に一回、特に東京で開催となると50年に一回あるかないかのイベントである東京五輪のオリンピックの開催日が近づいています。

このような世界最大規模のイベントでは様々な公式グッズが流通しますが、その規模は数百億円を超える規模ともいわれます。

この6月には東京五輪のニセエンブレムのピンバッチを販売した業者が逮捕されましたが、逮捕された業者はこの案件以外にも複数います。

特に東京五輪グッズの場合、商品に五輪関係のエンブレムを表示するだけで偽物ができてしまうことから大量に供給しやすい下地があります。

公式グッズは証明書が付いているが

もちろん東京五輪関係者もこの点は事前に認識すみで、東京五輪関係の公式グッズには証明書、刻印、見る方向により標識が浮かび上がるホログラム技術などを駆使して本物と偽物とが分かる対策を取っています。

しかし偽物も一見してニセモノと分かるのであればよいのですが、簡単にニセモノと分かると売りさばくことができません。このため本物か偽物か一見しただけでは分かりにくいものが流通しやすくなります。

(2)法律の適用は三段構え

東京五輪関連商標を指定された商品に表示すると商標法違反

商標権は登録の際に指定した商品に関連して、特許庁に登録された商標を使う行為を規制できます。例えば「五輪」との商標が文房具を指定して登録されている場合には、正式に許可を受けた者以外は、業務上文房具に「五輪」との商標を表示できなくなります。

東京五輪関係の登録商標は幅広く権利を取得しているため、安易に商品に五輪関連の商標を無断で表示すると商標法違反になります。

東京五輪関連エンブレムを販売目的で所持すると商標法違反

商標権は登録の際に指定した商品に関連して権利が生じるのですが、指定した商品とは関係なく、エンブレムのみを販売目的で所持する場合にも商標法違反になる場合があります。

いわゆる「間接侵害」の規定です。間接侵害とは、直接の商標権侵害には当たらない行為について、一定の予備行為を商標権侵害になると規定して、登録商標の信用を強力に保護しようとする規定です。

第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
6. 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
商標法条文 第37条第1項第6号から引用。

難しい条文内容ですが、ざっくりいうと、侵害目的で、登録を受けた東京五輪関連エンブレムを販売目的で所持すると商標法違反になる、という規定です。

特に条文上「侵害するものとみなす」と規定している点に注目してください。法律上「みなす」という文言は怖い表現です。反論を許さず、その通り法律を適用する、と宣言しているのと同じだからです。

商標登録の際に指定された商品とは関係なく登録商標を表示するものを売るのは大丈夫、と考えるのは間違いです。直接侵害を問う第一の商標権の規定の他に、第二の規定であるこの間接侵害の規定が働いて、商標法違反で検挙されることもありえます。

有名な東京五輪関連エンブレムを販売すると不正競争防止法違反

では東京五輪関連エンブレムの中で、商標登録されていないエンブレムを選んで販売すれば大丈夫か、というとそうではありません。

今度は第三の規定である不正競争防止法が発動します。不正競争防止法は、非常に有名なマークを商品等に販売することを規制する法律です。

特許庁で登録されていないエンブレムであっても、非常に有名なものはこの不正競争防止法の規定が働いて、無断で販売することができないことになっています。

無断で販売すれば、もちろん、検挙されることもありえます。

(3)知らずしらずのうちに法律に違反する場合も

販売商品の中に本物以外にニセモノが混じっていたら

大量にニセモノ商品が市場にばらかまれば場合、偽物とは気がつかずに本物と信じて東京五輪関連グッズを販売してしまう問題が生じます。

仮に自ら販売した商品が偽物だとは知らなかった。本物と説明を受けた。本物と信じて消費者に販売した、という場合であっても、販売したものがニセモノであれば、これは法律違反になります。

簡単にニセモノと分かる粗悪な商品では買う前にばれてしまい売り捌くことができないので、偽物を売る側はそれなりに本物か偽物か一見しただけでは分からないものを供給してきます。まさにイタチごっこです。

全部が全部偽物であれば、それが偽物であることを見抜くのはそれほど難しいことではないでしょう。でも実務上困るのは、大量にある商品について、本物の中に偽物が混入している、という状況です。

本物だと思っていて、事実本物の商品を扱っていたのだけれども、一部に偽物が混入していた。

こういった状況が再現されると、文字通りトラブルに巻き込まれます。注意点は次の通りです。

正規代理店を通じて東京五輪関連グッズを入手する

正規代理店を通して東京五輪グッズを仕入れる理由は、まさにトラブルを避けるためです。悪意はなくても偽物を販売したことが公表されると、お店の信頼が損なわれます。

正規品サンプルとの直接比較を行う

怪しいと思ったら、きちんと裏の取れる正規品を入手して比べてみましょう。人まかせにして、扱う商品の管理を怠っていると、いつの間にか偽物が紛れ込んでいるかもしれません。

流通経路が不明な商品に手を出さない

偽物を販売する業者の中には、それが偽物とわかっていない者がいることを前提に真偽判断をする必要があります。関連する流通業者の全員が、それが本物と信じて偽物を扱っている状況がもしかしたらあるのかもしれない、という視点を持つことも必要です。

(4)まとめ

市場にニセモノが出回っている、ということは、知らず知らずのうちにこちらが法律違反をする可能性があることを示唆します。

東京五輪という世界最大級のイベントが開催される中で、偽物商品を完全に抑え込むことは簡単ではないかもしれません。けれどもそういったイベントのおかげで、我々の商品に対する注意力、真贋を見分ける目利きも鍛えられていきます。

私のコメントは、本日の日本経済新聞の社会面に掲載されました。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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