店舗名として商標を登録する際の注意点とは?

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索引

初めに

商標を特許庁に登録すれば、その商標を使用できるのは商標権者だけになります。店舗名を他人に使われること困るので、店舗名だけを登録する際の注意点について説明します。

(1)店舗名だけを登録するには?

(A)商標法では店舗名の登録はどのように認められるのか

店舗名だけを商標登録したい、という希望は、他人に自分の店舗名を使わせたくない、という観点から生じます。これまで長い間かけて築き上げてきたお店の信用を乗っ取られては困ります。

商標法では、権利範囲を指定しない商標だけの登録は認められていないのです。

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。商標法第6条第1項

法律上は商標だけでなく、商標に使用するための商品とか役務を指定しなさい、ということになっています。

商品は、お客さまに販売するもので、例えば「化粧品、サプリメント、アクセサリー、服、スマートフォンアプリ」等です。また役務は商品とは異なり、業務を提供するもので、「冠婚葬祭業、知識の教授、広告業」等です。

つまり、権利の内容を指定せずに、店舗名だけを登録することは、商標法で認めませんよ、という建前になっています。

ちなみに商標に使用する商品とか役務を指定せずに特許庁に商標登録出願をすると、拒絶理由になります。

(B)店舗名を登録するにはどうすればよいか

店舗名だけを商標登録することは商標法の法律で認められていないのですから、ここは法律に従います。メインとなる業務を中心に権利構築を目指します。

店舗名だけを登録することができないことを知ると、かなりの割合の方が登録をあきらめます。でもこれは危険です。商標登録は先に商標を使った人が権利者になる制度ではなくて、先に特許庁に権利申請をした人が商標権者になるシステムだからです。

店舗名だけを登録できないなら、登録するのは無意味と考えて手続を放置していると、後から全く関係のない第三者にこちらの商標をピンポイントで登録されてしまうことがあります。

(C)どの様に商品や役務を指定すればよいか

店舗名を使用するといっても、何らかの業務に使うはずです。例えばコンビニの様に商品を品揃えする場合もあるでしょうし、ラーメン店の様に飲食物の提供をする場合もあるかと思います。自らが展開する業務を中心に、商品や役務の権利範囲を組み立てていきます。

(2)ライバルの権利取得状況を研究する

(A)どの範囲で権利を取ればよいか分からない場合はライバルの取得した権利を参照する

店舗名を商標登録する場合に、その店舗に使用する商品とか役務を指定する必定があります。このため、どの範囲で権利取得するかについてはライバルの権利取得状況をチェックして参考にします。

ライバルの商標権の取得状況は、特許庁のホームページからアクセスできるJ Plat Pat(ジェイプラットパット)から確認できます。J Plat Patにアクセスすると、ウェブサイトの上部にヘルプデスクの電話番号が記載されています。ここに電話すれば、無料で使い方を教えてもらえます。

(B)該当するライバルがいない場合

この場合は、権利取得範囲を大きく二つに分けます。

この権利範囲を取得できなければ商標権を取得する意味がなくなるもの

これから業務展開を行うに当たり、権利範囲を狭い範囲に決め打ちしたくない、という気持ちはよく理解できます。

一方で、焦点の定まらない権利範囲で商標権の権利申請を行っても、最終的に大切な権利範囲が取得できなければ、何のために商標登録を行うのかが不明になります。

追加費用を支払わないで、重要なものに付随して取得するもの

将来どこまで事業の手を広げるかどうか分からない場合、あれもこれもと権利取得をよくばると費用が膨らみます。

将来使う見込みもない分野の商標権についてお金を払って商標権を取得しても、日本国内で3年間登録商標を業務に使用していない場合は、第三者による特許庁への請求により商標登録の不使用取消審判を請求されてしまう可能性があります(商標法第50条)。

必要な権利をきっちり取り切ることが大切で、あれもこれもと欲張っても費用のムダになります。必要不可欠な権利範囲を取得する際に、追加費用を支払わなくて済む範囲内で商標権を取得することを目指しましょう。

特許庁の類似商品役務審査基準を参照する

実際の権利の絞り込みには特許庁の類似商品役務審査基準を参照しながら決めます。電話帳一冊くらいの厚みがありますので、権利漏れがないように、弁理士としっかり相談して決めましょう。

(3)店舗名は文字がよいかロゴがよいか

店舗名に何を商標として選択するのかは、実際に出願する人が自由に決めることができます。ロゴとしては、例えばスターバックスの円形のロゴマークとか、サイゼリアの楕円形のロゴマーク等のようなものをイメージすればよいです。

ただし、文字商標が取得できなければ、後の店舗展開に困りますので、最初は文字商標の権利取得を目指すのがよいでしょう。

(A)ひらがな、カタカナ、アルファベット、英語、文字商標はどれがよいか

商標権は同じ読み方のもの、同じ意味のものに権利が原則及びますので、実際に店舗表記するものを選びましょう。

後で海外展開を図る具体的な計画があるなら英語表記を選ぶのがよいです。

(B)大手と似た様な商標は選ばない

大手の有名な商標を少しもじっただけの商標とか、大手の有名な商標を連想させる商標は避けるのが無難です。既に大手が商標権を登録している場合には、その商標権と権利が衝突するのを理由として商標登録が認められない場合があります(商標法第4条第1項第11号)。

また大手が商標登録をしていない場合でも、有名な商標と似た商標とか、大手と何らかの提携関係があると誤解させるような商標も特許庁の審査に合格できません(商標法第4条第1項第10号、同15号)。

仮に特許庁の審査を無事通過することができたとしても、後から異議申立とか無効審判により登録が無効になる可能性もあります。また検索エンジンの順位でも大手のウェブサイトに押されて検索結果が下位に沈んでしまいます。

(C)商標権が得られない店舗名を選ばない

商標権が得られない商標の代表例は文房具の販売に「安い文具店」、自転車の販売に「自転車屋」等です。みんなが使う必要のある言葉は一人に独占させる理由もないので、特許庁の審査に合格できません。

また「宇都宮餃子」などの「地域名」と「商品の普通名称」との組合せの普通の文字だけの商標は個人でしても審査に合格できません。

この様な「地域名」と「商品の普通名称」との組合せの普通の文字だけの商標は地域団体商標として、その地域の関係者等が取得できる権利であり、一個人で突撃しても審査を通過することはできないです。

(D)店舗名に裏の意味がないかチェックする

例えば、「あみん」という店舗名を考えた、とします。ところがこの「アミン」はアンモニア化合物の一種の名前で、これを聞くとトイレの臭いを連想する人もいると思います。辞書をひく、ネットで調べるのはもちろんのこと、方言とか外国語で意図しないスラングの意味がないか、チェックしておく必要があります。

(4)後から内容を改変できない点に要注意

ネットでは簡単に商標登録ができるとの記載を見かけることがありますが、これには注意が必要です。一度特許庁に商標登録出願の願書を提出すると、店舗名の変更はもちろん、権利内容の変更や追加は一切認められなくなります。

内容の検討が不十分な願書を特許庁に提出した後に、権利内容の漏れに気がついたり、商標を変更しなければならない事情が生じた場合は、最初の出願費用と同じ額を払って、また一から出願をやり直す必要があります。

内容検討が不十分のまま、そのまま出願してしまうと、手続業者に倍額を払わなくてはならない結果になります。

しかも後から追加して出願した場合、先に出願した内容に後から出願した内容を付け足すことができませんので、これからずっと、倍額の手続費用を支払う必要があります。

(5)まとめ

権利範囲を指定せずに店舗名だけを商標登録することはできないのですが、これは何もあなただけが登録できないわけではありません。

ライバルも同じく店舗名だけを登録することができないのですから立場は同じで、あなただけが不利になるわけではありません。

もしライバルが店舗名だけを登録できないなら、商標権を取得するのは意味がない、と考えて店舗名を登録しないライバルが多ければ多いほど、その分だけ、こちらが安全に店舗名について商標登録を済ませることができます。

ライバルより一歩先に動く、との姿勢は忘れないでください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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