ウルトラマンの仏像画像問題の件でテレ朝スーパーJチャンネルでコメント

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(1)ウルトラマンの画像は海外で保護されるか

日本国内では著作権法で保護される

ウルトラマンの画像を無断で複製・翻案して販売すると、著作権法違反になります。ウルトラマンの著作物は日本国内で創作されたものであり、日本の法律でウルトラマンの作品が守られるのは納得できると思います。

ウルトラマンの画像に関係する法律としては、著作権があります。

日本の著作権法によると、ウルトラマンの画像を無断で複製する行為は禁止されています(著作権法第21条)。複製とは、いわばコピーで、著作権者の許可を得ないで勝手に複製して販売すると著作権法違反になります。

またコピーしないまでも、無断でウルトラマンの作品を改変するのも翻案として著作権法違反(著作権法第27条)になります。

さらに著作者は、自分の著作物の無断変更を受けない、同一性保持権と呼ばれる権利(著作権法第20条)ももっています。

日本国内でウルトラマンの画像をそのままコピーして販売する行為は複製権を侵害することになります。
またコピーして同一物を作るのではなく、勝手に画像に手を加えて販売する行為は、翻案権や同一性保持権を侵害することになります。

各国国内法と条約の整備が保護の前提

では、外国でウルトラマンの画像が保護されるか、というと問題があります。

日本で創作されたウルトラマンの著作物は、日本国内では日本の著作権法により保護されます。
しかし、日本の法律の効力が及ぶのは、日本国内、つまり、日本の領域内だけです。

ですので、海外でウルトラマンの画像の複製や改変を止めさせることができるかどうかは、日本の国内法だけでは解決できないのです。

外国でウルトラマンの画像が保護されるかどうかについては、無断でウルトラマンの画像が販売されている国で、

  • 画像関連を保護する国内法令があること
  • 条約で、日本との間にその国が日本の画像も守ると約束していること

の二つが必要になります。

無断で画像を複製翻案していはいけない、という国内法令がなければ、「無断で複製翻案してはいけませんよ」、と意見表明を行うことはできても、その外国国内で取り締まることができません。

また無断で画像を複製翻案していはいけない、という国内法令があったとしても、日本と条約を締結していなければ、日本のウルトラマン画像を保護する義務までは、その外国は負わないことになります。

国内法令と条約がセットになって存在してはじめて、ウルトラマン画像が外国でも保護されます。

日本国内で保護されるから外国でも保護されるか、というと、そうとは限らないです。日本と国交がなく、条約の取り決めも交わしていない国では、ウルトラマンの画像が保護されないこともあり得ます。

日本国内の論理は当然には海外では通用しないことに注意が必要です。

今回問題となったタイ国ですが、国内法令で著作権法が存在します。また著作権法を保護するベルヌ条約に日本もタイも加盟しているので、日本の著作物であるウルトラマンの画像は、タイ国内でも保護されます。

タイ国内で保護される、というのは、タイ国内で日本の著作権法が適用される、ということではありません。

タイ国内で、タイの著作権法に基づいて、ウルトラマンの画像が保護される、ということです。

(2)ウルトラマンを仏像風にアレンジした画像をタイ国内で販売

ウルトラマンの画像を仏像風に無断で改変するのは許されるのか

タイの女子大生が、ウルトラマンの画像を仏像風にアレンジして販売したことが問題になったのは理由があります。

一つは仏教国であるタイで、神聖な仏像の尊厳を毀損する行為は許されないという風潮があることが挙げられます。
タイの女子大生も、仏像を侮辱する結果になり申し訳なく思うとの旨の謝罪をしたことが報道されていました。

では仏像をこのような形で利用した行為を謝罪すれば許されるのか、というと、それはそれ、これはこれ、という扱いになるのが法律です。

仮に仏像を侮辱する行為を禁止する法律があるとすれば、仏像を侮辱した行為が法律違反に問われます。

それ以外に、ウルトラマンの画像を無断で改変する行為が著作権法に違反するなら、これは他の法律に違反するかどうかとは独立して、法律違反に問われることになります。

一つの行為が、同時に二つ以上の法律に違反することは普通に生じます。

タイにも著作権法があり、ウルトラマンの画像を改変する行為も法律で禁止されます。

タイ国内の著作権法

第4条
「複製」(Reproduction)とは、その有形表示の形態を問わず、原著作物、複製物若しくは頒布品から、その全部若しくは一部を模写し、模倣し、複製し、製版し、録音し、録画し若しくは録音録画することをいい、コンピュータ・プログラムにあっては、その全部若しくは一部を、その手法を問わず、プログラムの化体する媒体から新著作物を創作することなく、その実質的部分の複製物を制作することをいう。

「翻案」(Adaptation)とは、その全部若しくは一部であるかを問わず、新著作物を作成することなく、原著作物の実質的部分を転化、改変若しくは模倣(emulation)する複製物をいう。
(1)文芸の著作物にあっては、翻訳、変形また選択・配列による収集 (collection)を含む。

第27条
本法により著作権を有する著作物に対し、第15条(5)に規定する許可なくしてなされる以下の行為は著作権の侵害とみなされる。
(1)複製又は翻案
(2)公衆への伝達

参考:文化庁「タイにおける著作権侵害対策ハンドブック」
タイ国の著作権法 B.E.2537(1994年)より引用

上記の通り、無断でウルトラマンの画像を改変して販売するとタイ国の著作権法に違反することになります。

女子大生から作品を購入して転売した業者の扱いは?

通常、法律違反品を販売する業者は、それぞれが法律違反を問われることになります。例えば、有名メーカーのブランドバックをあるメーカーAが偽造して、卸業者Bに販売した。この偽ブランドバックを仕入れた卸業者Bが小売店Cにこれを販売した。さらに小売店Cは偽ブランドバッグを販売した、という場合があったとします。

この場合は、メーカーA、卸業者B、小売店Cのそれぞれが法律違反に問われます。
メーカーAだけに責任があり、他は関係がない、という主張は、通らないのが通常です。

タイの場合は法律に規定があり、事情を知って販売した場合には法律違反になる、との規定があります。

タイ国内の著作権法

第31条
その著作物が他人の著作権を侵害して作成されたものであることを知り、又は知り得べかりし者が、利益を目的として、その著作物について次の行為をすることは、著作権の侵害とみなされる。
(1)売却すること、売却のために保持すること、売却のため提供すること、賃貸すること、リースのため提供すること、割賦による売却、割賦のためにする提供

参考:文化庁「タイにおける著作権侵害対策ハンドブック」
タイ国の著作権法 B.E.2537(1994年)より引用

(3)円谷プロダクション側の対応は?

ウルトラマンの画像の無断改変がタイ国内の著作権法違反になるとしても、自動的にタイ国内の警察や裁判所が動くわけではありません。

通常、著作権絡みの権利は、内々でライセンス認証がされています。そして適正なライセンスがなされているかどうかは、本人たちが外部に表明しなければ、検証する手段がありません。

仮に権利者の意向とは関係なくタイ国内の警察や裁判所が動いた場合、後から適正なライセンスが結ばれていたことが判明すると、全ての行政・司法の動きが無駄になります。

このため、通常は権利者側からの申し出を待って、具体的なアクションが始まります。

円谷プロダクション側も、タイ国内で裁判などを行うとすれば、相当な費用出費を強いられます。
実際にタイ国内で著作権法違反を追及するかどうかは、費用との兼ね合いで円谷プロダクション側が総合的に判断することになります。

(4)まとめ

タイの女子大生も軽い気持ちでウルトラマンの画像を仏像風に無断でアレンジしたのかもしれません。
他人の作品に乗るのではなく、ぜひ、自身の独自作品で勝負してほしいと思います。

私のコメントは、2019年9月14日のテレビ朝日「スーパーJチャンネル」で放送されました。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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